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閉経後の女性の肌について

女性の肌は女性ホルモンと密接に関係しています。今まで、妊娠・出産・更年期と女性の肌の変化についてお話をしてきましたが、女性ホルモンの影響が一番大きく肌に現れるのは閉経後です。なぜならば閉経により女性ホルモンが激減するからです。

人生100年時代とまで言われる昨今では、閉経後の人生もかなり長いものになります。ほとんどの女性はいつまでも美しく輝いていたいと思われているはずです。そのような皆様は、たとえ女性ホルモンが減少しても、何歳になっても美しい肌を保つことを望まれるでしょう。今回のお話が少しでもそのヒントになればと願っております。

 


閉経による肌環境の衰え

一般的に閉経とは排卵がなくなり、生理が永久に来なくなり、妊娠の可能性がなくなることを言います。日本人の閉経は平均50歳ですが個人差がかなりあります。閉経すると卵巣の機能が低下し女性ホルモンが激減します。閉経前後は生理が来たり来なかったりし、また日数や量もばらつきがちになるため閉経しているのか判断しづらいのですが、生理が継続して1年来なければ閉経と診断されます。(稀に1年過ぎて生理が来る人もいます。)

閉経により女性ホルモンが減少しますと、肌のハリが失われてきます。女性の肌の艶感を保つには、女性ホルモンであるエストラジオールが重要であることはご存知の方も多いかと思います。エストラジオールは肌の最表層の角層の水分を保持し肌の潤いを保ちます。また真皮層のコラーゲンやエラスチンの合成を促進して肌のハリを保ち、シワやたるみを予防する働きがあります。ですから閉経して女性ホルモンが減少しますと、ほうれい線、口角から顎に伸びる2本のマリオネットライン、下眼瞼のたるみ等に繋がってきます。これらの変化は見た目年齢を間違いなく老けさせます。

 

■閉経後は一層の光老化対策を

閉経後のスキンケアで最も大事なことの1つは光老化の防止、つまり紫外線対策です。紫外線は活性酸素を増やし、シミやシワの原因になります。さらに肌の表皮を厚くして深いシワの原因となり、強いては皮膚がんの原因ともなってきます。

光老化は努力次第でかなり防ぐことができますので、普段から日焼け止めをこまめに塗り、帽子、日傘やサングラスの着用等で遮光を心がけてもらいたいです。最近、飲む日焼け止めと称したサプリメントも販売されています。こちらは皮膚の抗酸化作用を増強させる効果があるので、日焼けに伴うダメージを早くに改善させる効果があります。さらには内服を継続すると紫外線により発生する活性酸素を除去することによって、シミややシワの予防が期待されます。ただし、飲んでいるだけでは日焼けの防止になりませんので、必ず塗る日焼け止めと併用するようにしてください。

一方で光老化を防ぐために極端な遮光をしていると、体内で作られるビタミンDが不足するリスクがあります。ビタミンDはカルシウムの吸収を促進させるもので、不足すると中高年の女性に多い骨粗鬆症になる可能性が高くなります。骨粗鬆症のリスクを減らすには、ウナギやマグロ、サーモン等のお魚や椎茸等からビタミンDを補うようにしてください。

アメリカではビタミンD強化食品が売られていますが、日本では欧米より紫外線量が多く、干し椎茸や魚の摂取が多かったこともあり、ビタミンD不足は少ない傾向にありました。ですが近年は食生活の欧米化、日焼け止め習慣などからビタミンD不足に陥りがちになっていますので注意してください。食品からの摂取が難しければビタミンDのサプリメントで摂る方法もあります。

骨粗鬆症予防に、ビタミンDではなくカルシウムのサプリメントを摂るのも一考ですが、過剰摂取すると動脈の石灰化を促進させるため、なるべく牛乳や豆乳、小松菜等の食品からカルシウムを摂るようにしましょう。ビタミンDもカルシウムもサプリメント類に頼るよりは、毎日の食生活を意識して食品で摂ることが理想です。

 

■より肌の保湿効果を高めるために

閉経後のスキンケアでもう1つの重要課題は保湿です。昨今は優れた化粧品の開発が進んでおり保湿力のある基礎化粧品も多く出ています。閉経前後からは、前述しましたように女性ホルモンが減りますので、保湿効果の高い化粧品を用いるようにしましょう。見分け方としては内容成分にセラミドやヒアルロン酸が入ったものを選ぶと良いでしょう。また浸透力を高めるために有効成分を分子より小さくナノ化したものがお勧めです。

閉経前後から、保湿の基礎化粧品を表面に塗るだけでは、真皮の含水量を増やす事がなかなか難しくなります。よく年とともに化粧品が合わなくなったとか、以前と同じ化粧品を用いていても効果が感じられなくなったというお話を聞きますが、このことは加齢により真皮の保湿力が衰え、水分を浸透させることの難しさを現しています。そこで、有効成分をイオン導入やエレクトロポレーション等の方法を用いて浸透させることも効果的です。

イオン導入とは電気の力で有効成分を肌の奥まで深く浸透させる技術です。マイナスの弱い電流を肌に流し、イオン化した有効成分と反発する力を活用して浸透させます。エレクトロポレーションは、別名電気穿孔法とも呼ばれるもので、電気パルスを利用する技術のことです。元々は医療分野で研究されていたものなのですが、最近は美容やスポーツ等、様々な分野から注目を集めています。エレクトロポレーションの仕組みは、電気パルスを用いて細胞と細胞の間に小さな隙間を開け、その隙間から有効成分を基底層や真皮層といった肌の深層部分まで届けるというものです。小さな隙間を開けるといっても針などを使うわけではないので、痛みを伴うものではありません。

イオン導入、エレクトロポレーションの治療は医師免許がなくても行えますので、エステティクサロンでも受けていただけます。

 

■コラーゲン摂取の落とし穴

美容サイトやコマーシャルでは皮膚のハリやツヤのためにコラーゲンを補うことが勧めらてれますが、実は食品からコラーゲンを摂取しても、なかなか吸収されにくいです。最近はコラーゲンをさらに細かくしてより消化吸収されやすくなったコラーゲンペプチドも販売されていますが、コラーゲンもコラーゲンペプチドも消化される段階でアミノ酸に変わるので、他のたんぱく質を摂取しても効果は変わらないと考えられます。

コラーゲンの摂取はローカロリーにアミノ酸を摂取出来る利点がありますが、コラーゲンのみの摂取に片寄ると他の必須アミノ酸が不足しがちになります。肉や魚から摂れる必要なアミノ酸もバランス良く取り入れていくことが、お肌のコラーゲン生成に役立ちます。

良質なたんぱく質は美肌には必要なものですが、片寄りすぎると腎臓に負担がかかったり、腸内環境も乱れてしまうので、野菜や発酵食品等も含めバランスの良い食事を心がけるようにしてください。

 

■女性ホルモンを補う食品

女性ホルモンを補う食品として大豆が挙げられます。大豆に含まれる大豆イソフラボンは体内で女性ホルモンと同様の働きをすると言われています。ですから大豆の加工食品、豆腐や豆乳、納豆、味噌等は積極的に摂取してもらいたいです。イソフラボンはポリフェノールの一種です。ポリフェノールには強い抗酸化作用があり、肌の酸化を防ぎます。また納豆や味噌は発酵物でもあり腸内環境を整えるので、肌にも良いと考えられます。

緑茶や紅茶に含まれるカテキン、赤ワインやブルーベリーに含まれるアントシアニン等も、ポリフェノールの一種です。中高年の方にはこれらの食品も上手に取り入れて、美肌に繋げてほしいと思います。チョコレートやココアに含まれるカカオポリフェノールも美容に良いですが、チョコレートはカロリーも高いので食べすぎには注意しましょう。

 

■サプリメントの活用

市販ではたくさんのサプリメントが売られていますが、正直、効果の程ははっきりと分かりません。何となく効きそう…と、サプリメントに頼るよりは、禁煙したり、睡眠を十分にとったり、紫外線の予防を行い、皮膚のエイジングの原因である活性酸素を作らせない生活習慣の改善のほうが有効です。ただし、忙しい現代人は食習慣が乱れがちになることも多いので、その場合はビタミン剤やサプリメント等を上手に取り入れてください。

皮膚の表皮の色をコントロールし、抗酸化力を高め、真皮のコラーゲンを再生させるための「ビタミンC」,「ビタミンE」,「トラネキサム酸」の内服は有効ですので、これらの有効成分のサプリメントは活用されると良いでしょう。また善玉菌である乳酸菌や、乳酸菌を含むサプリメントで腸内環境を整えると免疫力が上がり、内臓脂肪の蓄積やコレステロールの上昇を抑えることができるので、こちらもお勧めします。

 ■中高年のメイク

 女性誌のコラムで、ナチュラルメークのほうが「若く見える」と読んだことがありますが、確かにそうだと思います。中高年になるほど厚化粧を避け、なるべく自然に見えるメイクを心かげていただきたいです。シミやくすみを隠そうと厚くファンデーションを塗ったり、たくさんパウダーをはたくと、それがシワに入り却って逆効果になります。

前回の更年期のコラムでも書きましたが、最近のメイク商品の進化は素晴らしく、薄付きでカバー力のあるファンデーションも多く出ています。流行のクッションファンデーションは伸びもよく、自然な仕上がりですのでこちらもお勧めです。ご自身に合った若見えメイクを見つけていただきたいですね。

 

以上、閉経後の肌の変化やケアについてお話しました。少しはお役にたつ情報がありましたでしょうか。最近の熟女パワーにはすごいものがありますので、きっと皆様方がご自身に合った美容法をみつけ、人生の後半を美しく楽しく、過ごされると信じています。

 

肌と心の関係はまだ詳しく解明されていませんが、心が明るい人は肌のトーンも明るく見える気がします。その意味でも閉経をネガティブにとらえることなく、ポジティブ志向で若々しく活きていただきたいです。

 


~皮膚科医師 白木 美保~

西奈良メディカルクリニック メディカルフィットネス登美ヶ丘勤務
http://www.nishinara-med.com/staff.html

皮膚の事は何でもお聞きください。
皮膚がより健康な状態で年齢を重ねていけるようにお手伝い致します。
美容に関するご相談も、お気軽にどうぞ。
同じ子育て中の身ですので、お子様の皮膚トラブルやスキンケアなど細かな事でもご相談して下さい。

■経歴
関西医科大学卒
関西医科大学皮膚科入局
関西医科大学滝井病院 皮膚科
関西医科大学枚方病院 皮膚科
H26~現職(医療法人悠明会)

2018.08.26 column