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美容鍼灸 中野真由美先生コラムNo3 夏を元気に乗り切るために…

夏を元気に乗り切るために

季節は初夏を過ぎ梅雨に入りました。暑い夏はもう間近に迫っています。

これから残暑が終わるまで、高温多湿で体には厳しい日々が続きます。夏は一年で一番、体力を消耗する時期ですが、その夏を健やかに乗り切るにはどう過ごせばよいか…東洋医学の見地からお話をさせていただきます。

数千年に渡り継承されてきた東洋医学も、近年のエアコンで涼しく乾燥した夏の室内は想定外だったかもしれません?!古くからの謂われを顧みると同時に、エアコンの効いた現代の夏を過ごす注意点もご紹介します。

 

夏を健やかに過ごすキーワード「補陰養心

夏三月、此謂蕃秀、天地氣交、萬物華實

夜臥早起、無厭於日、

使志無怒、使華英成秀、

使氣得泄、若所愛在外、

此夏氣之應、養長之道也、

逆之則傷心、秋為瘧、

奉收者少、冬至重病

春の過ごし方のコラムにも紹介しましたが、こちらは現存する中国最古の医学書・黄帝内経に記された夏の過ごし方です。分かりやすく説明しますと…

 

・夏の三ヶ月を「蕃秀(ばんしゅう)」と言います。

文頭の夏の三ヶ月とは立夏から立秋の前日までの90日になります。「蕃秀」とは言葉を置きかえると「生長」です。「蕃」の漢字はあまり見慣れないですが、繁殖の意味を持ち、秀でて繁殖する…つまり穀類作物がよく伸びて育つ様を表現しています。

・天にある陽気が地面の水分を蒸発させ、地の陰気は天の雲気を吸収し雨を降らせます。

・全てのものは成長して、花は開き実を結びます。

・夜は暗くなれば眠りにつき、朝は早く起きましょう。

・暑さや日光を嫌がらず、外に出て心も体も開放して動きましょう。

・怒ると陽気が上がりすぎるので、心静かに過ごすように努めましょう。

・夏に咲き揃っている花のように、体の陽気はやりたい事をして、気持ち良く発散させましょう。

・これは夏の自然界における陽気の上昇に対応する方法であり、長夏(「大暑」7月下旬頃から「白露」9月第1週まで)を健やかに過ごす健康法です。

・これに背くと心気が傷み、秋になって疾病を発症します。

・冬にはさらに重い病を発症する可能性があります。

…と、なります。

 

この漢文から読みとれるキーワードは「補陰養心」。

心とは西洋医学の心臓、循環器系の臓器にあたります。心を労わり、陰を補うことが夏の健康に大切という訳です。そのためには、夜更かしをせず早起きをして、外に出て体も心も解放しましょう。陽気はやりたいことをして発散させ、怒ることは避け、心静かに過ごすように勧められています。

自然界の属性では、夏は「火」に属し、五臓では「心」に対応し、五味は「苦味」に対応します。苦味は「心」に入り、心の陰気を補い、体温を下げる涼血の働きと暑気を払う作用があります。夏にはアイスクリームやかき氷等、冷たいスイーツが多いですが、人工的な甘味は湿気を助長し、脾(胃や腸の消化器)を痛めるため、あまり多く食べるのは控えてください。

一方で、酸味を加えると湿気を払い、食欲が改善され、夏の倦怠感が取れます。暑い季節にはお酢のものが、よく献立にされるのは理にかなっています。夏に陽気を発散しないと胸に熱がこもります。エアコンや冷飲で胃腸が冷えて胸に熱がこもると、食欲不振や下痢になりやすくなるので、普段から苦味と酸味のものを適度に食べると良いでしょう。夏に良い食品については後ほど、詳しく述べることにします。

 

ポイントは「心の陽気」の発

黄帝内経には「天地の気が盛んに交わり、万物が花開き、実をつける」とありましたが、夏は自然界の植物が生い茂る季節、天地陰陽両方の気が盛んに交合することで、植物は花を咲かせ実をつけます。植物と同様に人の陽気も全開する花のごとく、全てを外に向け発散するように働きます。

つまり人間も自然界の現象に従って、体内の陽の気を、皮膚を通じて外界に発散するように心がけるべきです。「心の陽気」をうまく発散できないと、身体は暑さを感じ始め、冷房や冷飲を好むようになり、これを夏中続けると下痢をするようになります。

先の段落で「陽の気を、皮膚を通じて外界に発散する」と書きましたが、夏は体内の老廃物や毒素を、汗とともに排泄、放散できるようにすることが一番大切です。これに背くと陽の気が胸にこもり、肺がよく働く秋になると、その熱によって肺が乾燥し、痰の少ない空咳の原因にもなります。

 

一番の課題はエアコンと上手に付き合うこ

夏の精神養成法は、物事にイライラせず、気持ちを愉快に保ち、適度な汗をかいて暑さや湿気から身を守ることにつきます。暑さの中で心地よく快適に過ごすため、現代人はエアコンに頼りがちですが、夏の健康には「エアコン」と上手くお付き合いすることが大切になってきます。

近年は熱中症対策もあり、エアコンを使うことが当たり前になっています。そのことを否定する訳ではありませんが、長い間、エアコンの効いた涼しい室内にいますと、体の表面は冷たくなりますが、汗をかくこともないので、体内にこもった熱を発散できず、皮膚を通じてのデトックスが出来なくなります。また、食事や飲み物もついつい冷たいものになりがちですが、涼しい部屋で冷たいものを摂取しつづけると、消化機能が落ち食欲不振になり、いわゆるクーラー病に陥ります。

東洋医学の見地からは、夏でもあまり汗をかかない人や、冷える人、低血圧の人は、体調を崩しやすくなるとされています。特に心臓に持病がある方は注意が必要です。

そこでエアコンと上手く付き合う方法をご自身で考えてみましょう。クールビズでは室内を28度にすることが奨励されていますが、人それぞれに適温は違うと思います。とにかく冷やしすぎないことです。

女性は夏には肌を露出した服装が多くなりますが、一枚羽織るものを用意しておくことも大切です。冷たい空気は下に留まるので、特に下半身は冷やさないように気をつけましょう。熱中症には適度の水分補給が必須ですが、なるべく温かいものを飲むように心がけてください。江戸の昔から暑気払いに飲まれてきた甘酒は、保温効果もあるのでお勧めです。

日中にエアコンの効いた部屋で長く過ごす方は、朝夕の比較的気温が低い時に体を動かす等、毎日、軽く汗をかくことをお勧めします。

 

「補陰養心」の食生

東洋医学では、心臓機能を高め陰の気を補う食事をすると、夏を元気に乗り越えられると考えられています。「心」に良い五味は「苦味」と書きましたが、東洋医学では季節も5つに分類されており、夏の次の長夏(前述しましたが主に8月のことです)にも苦味は効果的です。

ちなみに長夏に対応している臓器は「脾」(胃や腸)となります。汗をかくと消化液の分泌も減少し、脾の働きが衰えます。消化不良、胃もたれなどを引き起こし、次に来る秋からに対応している「肺」や「腎」に影響を及ぼすので注意が必要です。

夏はビールやゴーヤ等、苦味が美味しく感じられるのもそのせいです。正に体が自ずと求める味覚と言えます。赤い食品も「心」を補強します。お魚では鮭、果物ではザクロやイチジクがあります。ザクロはポリフェノールやエラグ酸等の成分が美肌やアンチエイジングに効果的とされていますので、ザクロジュースもお勧めの飲み物です。イチジクも水溶性食物繊維やミネラルが豊富なので、デザートに取り入れてみては…と思います。さらにはスイカやトマト、パプリカ、小豆等は利尿作用があり、むくみに効果的です。

身体の熱をさます胡瓜や茄子の旬の食材を食べる場合、冷え症の方には、胃腸の機能を整える紫蘇や大根、梅干し等を薬味やタレとして使われると良いでしょう。オクラ、キャベツ、山芋も長夏にお勧めの食品です。ハトムギのお茶も除熱作用があり、夏、長夏にはピッタリの飲み物です。

「養心」のために、イライラを鎮める食材には、ゴーヤ、鰻、納豆等の大豆食品、トマト、パセリ、スイカ、グレープフルーツ等が挙げられます。土用の鰻は、夏に鰻を売る為に平賀源内が提案したと言われています。源内の思惑には無かったかもしれませんが、東洋医学的には正解でした!

ここで夏の食材の性格をまとめておきましょう。

温熱性のあるものは、鮎、生姜、桃、杏等があります。

体を温めるのでもなく冷ますのでもない平性の食品には、トウモロコシ、インゲン、ミョウガ、梅、枝豆、イチジク等があります。

涼寒性には、鱧、茄子、胡瓜、ビワ、メロン、トマト、冬瓜、レタス、スイカ、ハト麦、蕎麦、ウーロン茶があります。

これらの食材を見ると、なんとなく夏の定番メニューが浮かんできますね。私達も知らず知らずのうちに旬の食材でヘルスケアをしているということでしょうか。

 

夏に起こりやすい症状をケアするツ

夏は体内の老廃物を皮膚から汗でデトックスすることが良いと書きましたが、一方で汗をかきすぎ、体の中の水分が不足すると、血液が粘り流れにくくなり、血行不良が、むくみやだるさ等につながります。その結果、血液の塊(血栓)ができて血管が詰まりやすくなります。このことが、夏に脳梗塞や心筋梗塞が増える原因です。熱中症対策として適度の水分補給が言われているのはそのためです。

それではこれから夏に起こりやすい症状のツボをお教えします。

・むく

「むくみ」は心臓の機能が弱ると現れる体のサインです。血液は心臓のポンプ機能により、全身に送られていますが、心臓の機能が低下して血行が悪くなるとむくみます。さらに血行不良は腎臓にも悪い影響を与えますので、むくみに繋がります。

水分(すいぶん):おへその指一本分上の処にあるツボです。体の余分な水分の排泄を促します。

三陰交(さんいんこう):内側のくるぶしから指4本分上、わずかに凹みのある骨の後ろ際にあります。押えるとジーンとすることが多いです。冷えによるむくみに効く代表的なツボで、生理痛や更年期等、女性特有の症状にも対応します。

※その他、むくみには足の裏や、こめかみをマッサージすることも効果的です。

・だる

夏のだるさ、夏バテは、室内外の温度差、熱帯夜の睡眠不足、食欲不振等が原因ですが、各症状が悪い連鎖となり、放っておくと疲労が蓄積して夏風邪や、他の疾患の引き金になりかねません。

労宮(ろうきゅう):手のひら、拳を握って中指の先が当たる辺りにあるツボです。血行が良くなり、疲労回復を促します。

承山(しょうざん):ふくらはぎのど真ん中のやや上にあるツボです。押すと痛いことが多いです。ふくらはぎは第二の心臓とも言われていますが、代謝をアップして疲れによるだるさを回復します。

百会(ひゃくえ):頭頂部の中央にあります。万能のツボとも呼ばれ、血行を良くして不眠の解消にも繋がります。

手三里(てさんり):肘を曲げた時に出来るシワの外側の端から、指3本分手首に下がったところにあります。胃腸の働きを整え、だるさを改善します。

 ・消化不

消化不良は、脂濃いものや刺激の強いものの食べ過ぎ、冷たいものや炭酸飲料の飲みすぎ等の暴飲暴食によるものや、ストレスによるものもありますが、東洋医学的な見地では消化を司る脾(胃)の気が落ちていると考えられます。気の回復には睡眠が大切ですが、夏は暑さで眠りにくい夜が続くため、先天的に胃の弱い方は要注意です。

食関(しょくかん):おへその斜め上、おへそとみぞおちの中間の指二本分外側にあるツボで、体の中心線の左右にあります。消化不良を始め、急性や慢性の胃炎にも効きます。

商丘(しょうきゅう):足の内くるぶしの前、少し下の凹み押すと圧痛を感じところにあります。消化不良以外にも下痢や便秘、乗り物酔いや吐き気にも効果的なツボです。

・食欲不

夏の食欲不振は、消化不良にも関係してきます。消化がスムースに行われず胃に食べ物が滞る状態が続くと食欲も落ちてきます。冷飲冷食で消化機能が落ちることが原因です。

内関(ないかん):手首の内側、手首の中央から指3本分下がった処にあります。体の中の「心」の席所とも言われ、精神的なストレスや乗り物酔いにも良いツボです。

※食欲不振には、足裏の親指側の真ん中あたりを揉むのも有効です。

・下

汗もかかずに心の陽気を上手く発散できず、暑いので冷たいものを食べたり飲んだりしていますと下痢になります。下痢は体力を消耗しますので夏バテにも繋がります。

下痢点 (げりてん):手の甲の中心辺り、中指と薬指の骨が接しているところにあります。 下痢の原因となる腸の異常な働きを停滞させてくれます。

裏内庭(うらないてい):足の裏、人差し指の付け根にあります。食中毒や食当たりに効くツボです。

・ニキビ 吹き出

夏は汗をかくため、毛穴に老廃物が溜まり、ニキビや吹き出物の原因になります。日焼け止めやファンデーション等は、毛穴をふさぎますので、汗が出にくくなることにも関係してきます。

合谷(ごうこく):手の甲の親指と人差し指の間の分かれ目の凹みにあります。このツボも、前述しました百会と同様、万能のツボと言われています。肌トラブルにも対応します。

下関(げかん):顔の側面、耳の前斜め下にあります。口を開けると盛り上がり、閉じると凹みが出来る部分です。ニキビ、吹き出物に効く代表的なツボです。ちょっとお話が逸れますが、ホウレイ線やたるみにも効き、小顔のツボとも言われています。

前回のおさらいになりますが、指圧のコツは体の中心部に向かって優しく押すことです。ツボは押さえると何かジーンとした感覚がある場合が多いです。圧痛のある場所もツボの位置になります。表面の皮膚が傷まないように爪に気をつけて優しく押すようにしましょう。

 

以上、夏を健やかに過ごすためのヒントになるお話をしました。

厳しい暑さの時期を乗り切る何らかのお役にたてば嬉しいです。

気付かれた方もいらっしゃると思いますが、季節の過ごし方は次に来る季節の健康への序章となっています。私的なお話で恐縮ですが、今年の春は長期に渡り風邪に悩まされました。それは、その前の冬の過ごし方がまずかったせいと反省しています。皆様も夏の次に来る秋の体調のためにも、夏は「心」穏やかに過ごし、陽の気を上手に発散させてください!

 

 

「美容鍼まゆみん」中野真由美 https://www.mayuminsalon.com/

神戸松蔭女子学院大学卒業後、スパを運営する会社に就職.

23歳でマッサージ学院を立ち上げ 、森之宮医療学園鍼灸科に入学.

鍼灸師国家試験を取得した後、病院やスパ施設で勤務.

世界中のスパ施設を視察し、ヘルス&ビューティーの造詣を深め、

独自の鍼灸を開発.プライベートな美と癒しサロンには モデル等の著名人も多く来館.