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更年期の肌の変化について

更年期の肌の変化について

前回のコラムでは、出産後の女性の肌の変化やケアの方法についてお話を致しましたが、今回のテーマは更年期です。「更年期障害」という言葉もあるように、更年期は女性ホルモンの分泌の減少により、一生の内で大きく体調が変化する時期です。個人差はありますが、様々な症状に見舞われる方も多くおられます。体調や肌の環境が優れなく…それが精神面にも影響する場合もあるほどです。

今回は更年期の体調や肌の変化について述べるとともに、更年期を少しでも楽に乗り越える方法についても、アドバイスをさせていただきます。

■更年期とは…

更年期とは医学的に申しますと、卵巣から出されるエストロゲンが、出産可能年齢を過ぎて徐々に減ることにより、様々な症状が出る時期のことです。だいたい閉経前後の5年と言われています。日本人の閉経は平均50歳前後なので45歳から55歳までが多いですが、早い方では40歳前半頃から体調の不具合を自覚されることもあります。更年期の症状で悩まされる期間も短い方や長い方と色々です。

具体的には

  • 顔がほてる・汗をかきやすくなる・腰や手足が冷える・息切れ、動悸を感じる
  • 寝付きが悪かったり眠りが浅かったりする・怒りやすくイライラする
  • くよくよしたり憂鬱になったりする・頭痛・めまいや吐き気がよくある
  • 疲れやすい・肩こり腰痛手足の痛みがある

等がチェック項目として挙げられています。

丁度、年齢的に体力が衰え始める時期で、お子様の受験や結婚、ご両親の介護のストレス等が重なる場合も多いです。そのため肉体面と精神面の多岐に渡り症状が出て、正常な生活が送れなくなると「更年期障害」と呼ばれ、治療が必要になることもあります。

■肌の更年期症状 

肌の更年期症状でまず挙げられるのは、化粧品が合わなくなることです。自覚としては肌の水分保持能力が徐々に失われていくので乾燥を感じやすくなります。ですから、しっかり肌の角層に化粧水等の水分を浸透させ、クリームや美容液など油分で蓋をするようにしてスキンケアされることをお勧めします。

元々、日本女性は肌が薄く保湿力が少ない傾向にありますが、加齢とともにますます衰え、乾燥がシワにも繋がっていきます。昨今は中高年用の優れた美容液やクリームも多く販売されていますので、ご自身の肌に合ったものをみつけるようにしましょう。また洗顔料も保湿力を保ちながら洗い上げる、肌に優しいものを選ばれると良いでしょう。

■更年期ニキビ

更年期には肌の乾燥が進む一方で、ホルモンバランスの乱れから、却って皮脂量が増えたり、肌のターンオーバーが遅くなって角質が厚くなる方もあります。皮脂が増えると毛穴が詰まりやすくなることから、ニキビが出来てくる場合もあります。別名、更年期ニキビとも言われ、思春期のものとはとは異なる原因ですので、安易に思春期のニキビ肌用のスキンケア品を使用することは禁物です。より肌を乾燥させて悪化する場合もあります。

肌は乾燥すると皮脂分泌がより活発化し、角質が厚くなる傾向にあります。まずはしっかり水分を補い保湿することが大切です。化粧品はノンコメドジェニック(パッケージ等に記載されています)を使い、毛穴をふさぐような厚化粧は避けるようにしましょう。ご存知の方もいらっしゃると思いますが、ノンコメドジェニックの化粧品とは、ニキビが出来にくい成分を使っているもので、毛穴がつまりにくいことが試験で証明されています。 ※ニキビの原因となるアクネ菌の養分になりにくい油成分で作られているので、症状の悪化は防ぎますが、ニキビが治る訳ではありませんので、その点は間違えないようにしてください。

■更年期の赤ら顔

更年期になると赤ら顔になることがあります。「冷えのぼせ」が原因の場合もありますが、更年期症状でよくあるのが「ホットフラッシュ」と言われる突発的な顔のほてりによる赤ら顔です。自律神経のバランスがとれなくなることで体温調節がうまくできなくなり、上半身とくに顔に突発的なほてりを伴う赤ら顔になります。ひどい人は汗が流れ出ることもあります。

赤ら顔には「脂漏性皮膚炎」や「酒さ」といわれる皮膚病が隠れている可能性もあります。脂漏性皮膚炎は鼻や額の脂の多い場所に落屑(各層がはがれおちる状態)を伴う赤みを繰り返すものです。原因は色々とありますが、皮脂を好む細菌やカビが異常繁殖することもその1つとされています。大人の脂漏性皮膚炎は治りにくく、慢性になる方も多いです。更年期特有のイライラやストレス、食生活の乱れが悪化を招くこともあり注意が必要です。ビタミンB群には過剰な皮脂を分解する働きがありますので、レバー、牛乳、ほうれん草、きのこ等を意識して採られると良いでしょう。ひどい症状の場合は、細菌やカビの繁殖を抑える抗真菌剤や、炎症を抑えるステロイドの塗り薬で治療することになります。

酒さは中年以降に当初は鼻、頬、額にほてりを伴う赤みとして自覚し、徐々に赤や白いぶつぶつが出来てくる皮膚病です。酒の字が使われていますが、お酒が原因でありません。まだ、医学的にはっきりとした原因が特定されておらず、完治が難しくなる場合も多いです。赤ら顔は血管の拡張により生じるものですが、通常であれば時間が経つとともに元に戻ります。ところが酒さの方は何らかの原因で血管が収縮しなくなり、その状態が続くことになります。更年期の女性ホルモンの急激な減少により、皮脂の分泌が盛んになり、血管が拡張することが原因の1つとされています。

酒さになると非常に皮膚が敏感になっていますので、化粧品を次々変えたりすることは避け、アルコールや防腐剤、香料等を控えた低刺激性のもので、スキンケアを行うことを心がけましょう。皮膚に血管拡張を促すような温熱、寒冷、過度の日光は避けるようにしましょう。また・ストレスを貯めない・アルコールや香辛料は避けるのが、悪化をさせないポイントです。皮膚科に相談して飲み薬や塗り薬などの処方を受けるのも良いでしょう。

■更年期角化腫

更年期角化腫と言われる病気もあります。踵や足の親指の付け根等、体重がかかる部位が固くなるもので、時に赤みや亀裂を伴うことがあります。最初は皮膚が固くなるだけだったものが、次第に痛みを感じるようになります。また、手のひらの親指の付け根が固くなることもあります。これも更年期のホルモンが減少し乾燥が進むことで起こります。治療としては、まずは固くなった皮膚を柔らかくする尿素系の軟膏やサリチル酸ワセリン軟膏を塗ります。その後、ウオの目やタコを取る際に用いるスピール膏を貼り、角質を剥がすようにします。最後に、表面を研磨したり、削ったりするグラインダーで、患部の表皮を滑らかに整えます。あまり症状がつらければ皮膚科に相談して下さい。

■更年期障害

 更年期症状が辛く、日常生活が困難なほど悪化した場合を更年期障害と言います。

症状は前述しましたが多岐に渡ります。中には理由も分からず、だるい、しんどい等…体の不調を更年期と自覚せず悩んで、鬱状態になる方も多いようです。ご自身が更年期の年齢になっておられたら、訳の分からない不調は更年期障害を疑って、一度、産婦人科を受診して医師に相談されてはいかがでしょうか。ストレスを貯め込むとより悪化する場合もあります。

治療は女性ホルモン補充療法(HRT)が代表的ですが、副作用が心配であれば漢方薬等でも効果的なものがあります。胎盤から抽出されたプラセンタの注射も良いでしょう、いずれも保険適応のものもありますので医療機関に問い合わせて、医師に納得のいく説明を受けてから治療してもらいましょう。

■更年期のメイク

 更年期になると肌の保湿力が落ちてきますので、厚化粧は避けたほうが良いです。なるべくファンデーションは薄めにして、パウダーも沢山つけるとより乾燥が進み、シワが目立ちますので、注意してください。最近はチークもパウダーではなくリキッドタイプのものが出ていますので、そちらを用いると良いでしょう。アイメイクやリップメイクも、乾燥を防ぐ美容液成分が含まれているもので楽しまれると良いと思います。

タバコは悪化因子になりますので、この機会に禁煙されることをお勧めします。さらにはバランスのよい食事も大切です。特に美肌成分のビタミンB,Cを含む食品を積極的に摂りましょう。ブロッコリーやカボチャ、ニンジン等の緑黄色野菜、ザクロのジュース、また、味噌、納豆、豆腐等の大豆食品もイソフラボンを含むのでお勧めです。大豆イソフラボンは女性ホルモンのエストラゲンと良く似た働きをしますので、更年期の症状を緩和させることが期待されています。

栄養は食品から摂ることが第一ですが、難しい場合はサプリメントもあります。サプリメントの服用に関しては偏り過ぎると、他の問題を起すこともありますので、コマーシャル等を見て勝手な判断をせず、医師に相談するほうが良いと思います。

■更年期を乗り越えるために…

更年期に一番いけないのはイライラするストレスです。今までと違う自分に「なぜ…」と戸惑い、落ち込むことも多いかもしれませんが、それも、人生の1つのステップと考え、自分を受け入れることが肝心です。

この時期は内向的になりやすい自分をいかに外向的にするかが課題と考えます。自身の体調不良を思いつめるのではなく、軽い運動や趣味、旅行等、外に目を向けて活動するようにしてください。時間的には余裕が出てくる時期なので、以前からやりたかったことにトライすることもお勧めです。夢中になることがあればイライラも解消されます。

また睡眠障害になる方も多いですが、眠れない!と思うと余計に眠れなくなるものです。就寝前に・ゆっくりとぬるい目のお風呂で体を芯から温める・好きなアロマの香りや音楽を聞く等で、リラックスするように心がけましょう。

更年期の症状は人それぞれなので、絶対にコレ!という治療方法はありません。ですが、心の持ち方で少しは楽に乗り越えることができるはずです。最近は人生80年時代ではなく100年時代とまで言われるようになりました。更年期は丁度人生の折り返し点です。今後の人生を素敵に謳歌するためにも、更年期に何か新しいことに挑戦する等、前向きな気持ちで過ごすようにしていただきたいです。

 


~皮膚科医師 白木 美保~

西奈良メディカルクリニック メディカルフィットネス登美ヶ丘勤務
http://www.nishinara-med.com/staff.html

皮膚の事は何でもお聞きください。
皮膚がより健康な状態で年齢を重ねていけるようにお手伝い致します。
美容に関するご相談も、お気軽にどうぞ。
同じ子育て中の身ですので、お子様の皮膚トラブルやスキンケアなど細かな事でもご相談して下さい。

■経歴
関西医科大学卒
関西医科大学皮膚科入局
関西医科大学滝井病院 皮膚科
関西医科大学枚方病院 皮膚科
H26~現職(医療法人悠明会)

■担当
・皮膚科の診療
・日本皮膚科学会皮膚科専門医
・日本美容皮膚科学会
・日本小児皮膚科学会

 

 

2018.06.24 column