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ピーリングについて

皮膚科専門医としてお肌のアンチエイジングに関する情報をご紹介していますが、今回のテーマは「ピーリング」です。

時々、ピーリングとスクラブを混同される方もいらっしゃいますが、この二つは全く別のものです。ピーリングは酸を直接にお肌に塗り、角質を溶かす方法ですが、スクラブは小さな粒子でお肌の表皮を摩擦して古い角質や汚れを落とすものです。

ピーリングは、皮膚表面の古くなった角質を剥離して新陳代謝を促進させ、皮膚の再生を促すため、以前はニキビの治療や予防に使われていましたが、近年、ニキビの治療には、保険が適用される良いお薬がたくさん開発されましたので、ニキビだけでピーリングの施術を受ける方は少なくなっているように感じます。私のクリニックでもニキビ治療は基本保険診療で行っており、かなり良い治療結果が出ていると実感しています。しっかりと適切に治療を行えば、お薬のみでほとんどの方に十分な効果がある印象です。ただ保険治療で改善が難しい場合や、お肌に残った跡の治療には期待できますので、塗り薬等でニキビや吹き出物の跡が消えない方にはピーリングを試される価値はあります。

それではピーリングの施術について詳しくお話をしていきましょう。


■ケミカルピーリング
医療機関で行われるピーリングはケミカルピーリングと呼ばれています。ケミカルピーリングとは、皮膚に化学薬品を塗り、皮膚表面の古い角質を剥がすことによって起こる現象や効果を利用して、お肌の状態を改善する治療のことです。角質の離剥を促し、皮膚のターンオーバーを正常化することで、ニキビを出来にくくしたり、メラニンの排泄を促進する効果があります。またコラーゲン、エラスチン等の真皮成分の産生を促進させ真皮を肥厚させることで、メラノサイトのメラニン産生を抑制したり、皮膚表面のハリや弾力を取り戻す効果があります。皮脂線に対しては皮脂を除去し、毛穴を収斂させる効果もあります。

エステサロンでも、肌表面の状態を整える、化粧のノリを良くする、お肌に透明感を持たせる等の目的でピーリングが行われていますが、疾病の治療を目的としたケミカルピーリングは法律では禁止されています。エステでは使用する薬剤の濃度等にも制限があるので、ピーリングの施術を希望されるのであれば、まずは皮膚科専門医に相談されることをお勧めします。

現在、基本理念として「ケミカルピーリングは、皮膚科診療技術を十分に習得した皮膚科専門医ないし、それと同等の技術・知識を有する医師の十分な管理下に行われる行為である」とされています。専門的な知識を持たないサロンでの施術はトラブルも多く報告されていますので、皮膚科専門医がいる医療機関で施術を受けるようにしてください。

■ピーリングの種類
ピーリングに用いる薬剤(酸)にはいくつかの種類がありますが、「日本皮膚科学会ケミカルピーリングガイドライン(改訂3版)」には、使用される一般的薬剤として、グリコール酸、サルチル酸(マクロゴール基剤、エタノール基剤)、トリクロロ酢酸(TCA)等を挙げています。疾患やお肌の状態により、上述の薬剤の濃度を変えたり、時には数種類の薬剤を組み合わせて使用します。日本人のお肌にはグリコール酸が最もマイルドで比較的安全に使用できるので、多くの施設で使われています。もちろん皮膚の状態や目的により、使用する薬剤や濃度は変わりますので、担当者は常に患者の肌状態を見極め、注意をしながら施術をしています。

次に各種薬剤によるピーリングの特徴について詳しくお話をします。どの治療もしばらくは繰り返して行い、徐々にお肌の調子を整えていくことになります。治療のペース、期間には個人差がありますので、お肌の状態の改善が認められた段階で、専門医と相談して決めると良いでしょう。

・グリコール酸ピーリング
グリコール酸は、安全性が高く日本人の肌に合いやすいピーリング剤として最もよく使用されています。医療機関専用のケミカルピーリング剤で、フルーツ酸の一種です。古い角質や毛穴の詰まりを取り除き、殺菌作用が強いため、炎症性ニキビの改善が期待できます。また真皮まで浸透し、コラーゲンの生成を促進する効果もあるため、小じわの改善やハリ・弾力のあるお肌を取り戻したい時にも効果的です。ニキビの炎症を抑えるのはもちろん、シミやくすみ、毛穴の黒ずみ等、メラニンが原因となって発症するトラブルにも解消します。お肌の状態にもよりますが、約2週間に1度のペースで施術を行います。

・サリチル酸ピーリング
サリチル酸は、古い角質をしっかりと取り除く作用に優れています。サリチル酸でのケミカルピーリングはお肌のターンオーバーの正常化を促します。皮膚の深部ではなく角質層にだけ効果が作用するように調整できますので、お肌への刺激を最小限にして、ニキビ等の治療を行うことができます。ピリピリとする刺激や痛みが少ないことが多く、比較的、施術のペースが長く、月に1度の治療で効果が期待できることも特徴です。

・TCA(トリクロロ酢酸)ピーリング
TCAピーリングはケミカルピーリング剤の中でも、お肌に働きかける力が最も強いピーリング剤です。ですから、初期段階のニキビ等で使うことは少なく、主に治療が困難な炎症が進んだニキビやニキビ跡の治療をする際に使用します。真皮層をわざと傷つけ、創傷治癒力(体が持つ傷を治す力)を利用して、コラーゲンを増加させて凹みを持ちあげ、ニキビや吹き出物の跡を治すのがTCAのピーリングです。治療は約1ヶ月間隔で3~5回程度の治療を繰り返すことで、次第にコラーゲンの生成が促進されます。クレーター(月の表面にみられる円形穴)のような陥没や凹凸がある肌組織が修復され、なめらかなお肌を目指すピーリングです。お肌への働きが強い分、強い赤見が出やすく、カサブタができる治療になります。そのため、施術後のケア等も専門家の指導を受けてしっかり行う必要があります。

■成長因子ピーリング
成長因子ピーリングとは、従来のピーリングにお肌の若返りの効果が加わった新しい治療方法で、キメ・毛穴の開きや小じわを改善します。さらにはお肌のハリ・弾力を取り戻し、明るく若々しいお肌に導くことが出来ます。肌質・弾力・お肌のトーンアップを目的として、30%AHA複合体(アルファヒドロキシ酸)によるピーリング作用で、お肌の顆粒層を取り除き、くすみやざらつき・毛穴の汚れ等も取り除きます。

ピーリング自体にお肌の汚れを取り除く効果がありますが、成長因子ピーリングでは、それに加えお肌に美容成分を浸透させやすくする効果があります。つまり同時に配合されている、肌細胞の若返り効果を促進させる成長因子(EGF、FGF、ナイアシンアミド等)の吸収率が飛躍的にアップします。成長因子がお肌の奥まで浸透し、繊維芽細胞を刺激することで、コラーゲンやエラスチン等のお肌の弾力をつかさどる成分が増殖されます。その結果、肌表面がなめらかになるだけでなく、お肌そのものの弾力をアップさせることができます。施術の回数は約5~10回が目安です。はじめの3回程度は1~2週間おきに受けていただくと、より効果を実感していただけます。その後は1ヶ月に1度の治療がお勧めです。

■ピーリング後のお手入れ方法
ピーリングをした当日は、シャワーや洗顔は構いませんが入浴は控えてください。また激しい運動や飲酒も控えていただくことになります。施術後のメイクは、保湿ケアを怠らなければ問題はありません。

ケミカルピーリングの施術は、お肌に酸を塗る為、ピリピリとした刺激感があることが多いです。また施術後には皮膚が赤くなったり、乾燥しやすい傾向にあります。これらの症状は、たいていは2,3日で治まりますが、お肌の状態が回復するまでは、普段よりしっかりと保湿ケアを行ってください。

角質層は紫外線から皮膚を守る働きを担っていますが、ケミカルピーリングでは角質層をはがすことにより、紫外線が皮膚を通過しやすい状態になっています。そのため毎日、必ずサンスクリーン剤を使用してください。夏のように紫外線の強い時期の外出には帽子や日傘も用いましょう。また、角質層は皮膚から水分が失われるのを防ぐ働きもあります。ケミカルピーリングの後は角質が脱落して保湿力が低下しますので、ご自分のお肌にあった保湿剤、乳液等で十分な保湿を心がけましょう。

■角質のセルフケアの危険性と注意点
最初にお肌の角質ケアとしてピーリングとスクラブがあり、この二つは違ったものだと述べました。ピーリングはクリニック等の専門の施設に行く必要がありますが、スクラブはご自宅でされる方も多いと思います。

最近はスクラブ入りの洗顔料や化粧品がたくさん販売されており、手軽に購入できるようになりましたが、それらを用いてのセルフケアには少なからず危険がひそんでいます。スクラブは使った直後から効果が実感できるのが特徴で、お肌のザラつきが取れ、ツルツルの状態になります。ツルツルを実感できるのは嬉しいことですが、その分、お肌への刺激も強いことを忘れないでください。

古くなった角質や皮脂は取り除くことで、毛穴のつまりが解消され、お肌のくすみが改善され、肌が明るく綺麗になります。ただ、角質や皮脂はお肌にとって決して不必要なものではありません。それらはお肌の保護をする大切な役割を担っているのです。ですからスクラブのやりすぎは禁物です。やりすぎることで、新しい角質や必要な皮脂まで取り去り、そのことが乾燥やバリア機能の低下を招く可能性もあります。 ザラつきが解消されて気持ち良いのは分かりますが、多くても週に1,2回にとどめましょう。また、月経前等、お肌が敏感になっている時は控えたほうが良いです。お肌が乾燥して荒れている時や、日焼け後で炎症が起きている時は決して使用しないでください。

元々、お肌に強い刺激を与えることは良くありません。スクラブは強い刺激を加えてしまうことになりかねませんので、やり過ぎるとトラブルになることも多いです。ご自宅でスクラブをして・赤く腫れた・かぶれた・ヒリヒリする等の訴えで、皮膚科を受診される方は少なくありません。

スキンケアは「お肌をこすらない、やさしく扱う」ことが基本ですので、もしも角質のセルフケアをしたい場合は、ゴシゴシこするスクラブではなく、昨今はピーリング剤入りの石鹸も販売されていますので、そちらを使うほうが良いでしょう。極力お肌に摩察を加えない方法で、お手入れをされることをお勧めします。

そして最も大切なことは、お肌に少しでも異常を感じた時はすぐに使用を中止して、必要であれば専門機関を受診することです。

以上、ピーリングを中心に、古くなった角質を取り除きお肌の再生を促す施術についてお話をしました。ピーリングはお肌のくすみやキメの改善に効果がありますが、同様の目的でお肌の調子を整えるアンチエイジング治療には、レーザーを用いるものもあります。どちらも効果が認められる治療ですが、心理的にレーザーを照射することに苦手意識がある方は、ピーリングの施術を受けられるます場合が多いです。 まずはお肌の悩みを専門医に相談され、各施術の詳細を聞いて納得されてから、決めるようにしてください。

 


松田七瀬 マエダクリニック勤務 http://maedacl.jp/
経歴 平成17年 大阪市立大学医学部付属病院 初期臨床研究医
平成19年 大阪南医療センター皮膚科
平成20年 大阪府立呼吸器・アレルギー医療センター
平成25年 シロノクリニック 大阪市内皮膚科クリニック等で勤務
所属 日本皮膚科学会認定専門医 日本抗加齢学会専門医
日本皮膚科学会 日本美容皮膚科学会 日本アレルギー学会
日本皮膚アレルギー・接触皮膚炎学会 日本抗加齢医学会

2019.10.14 column