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美肌の大敵「紫外線」

■紫外線ケアの必要性

紫外線ケアは「美しく若々しい肌を保つ」には最も重要な課題です。加齢によるシミやシワ等は「光老化」とも言い、紫外線を浴びることによって引き起こされるものです。

 

ご存じの方も多いと思いますが、紫外線は波長により、長いほうからUV-A 、UV-B、UV-Cの3種に分けられます。一番短いUV-Cは現時点では地上にまで届かないと言われていますので割愛して、ここでは肌に影響を及ぼすAとBの2つの紫外線についてお話します。紫外線は波長が長いほど物を通過しやすいですが、有害作用は短いほうが強いです。

UV-Aは全てが地上に達します。晴れの日を100%としますと、曇りでは約50% 雨でも約30%が届き、窓ガラスも通過します。一方のUV-Bは一部のみ地上に到達します。晴れの日、曇りの日には届きますが、窓ガラスは通過しません。

UV-Aは「シワ」をつくる紫外線です。波長が長く肌の真皮にまで到達するため、ハリや弾力に関係する組織成分のコラーゲンやエラスチンを傷つけ、シワやタルミ、肌が黒くなる日焼け(サンタン)の原因になります。さらには皮膚の細胞を遺伝子レベルで傷つけるので、免疫力の低下を引き起こすこともあります。肌の老化の80%は光老化であり、主な原因はUV-Aにあります。

UV-Bは「シミ」をつくる紫外線です。UV-Aよりも波長が短いので肌の表皮までしか届きませんが、肌が赤くなる日焼け(サンバーン)の原因になります。こちらを多く浴びると肌自体の防御システムが働きメラニン色素を作り出します。それがうまく排出されないとシミの原因になります。また肌表面に活性酸素を発生させるのでシワ、タルミにも繋がります。UV-Bは皮膚癌の原因にもなります。細胞のDNAを破損して遺伝子変化を誘発することで、癌の発生と進展を促すのです。

紫外線の量は3月頃からぐっと増え9月頃までが多い時期です。春から夏の終わりまでの予防は言うまでもありませんが、比較的量が少ない冬でも予防はすべきです。前述しましたように晴れの日だけでなく曇りや雨でも降り注いでいます。太陽から直接に降り注ぐ以外に、空気中で散乱したり地面から反射するものもあります。ですから曇りや雨の日、そして日陰でも紫外線ケア は必要です。美肌を目指すには一年を通して紫外線対策を怠らないよう心掛けてください。

 

■外的紫外線ケア-紫外線予防の化粧品

紫外線を予防する化粧品・日焼け止めは「紫外線吸収剤」を含むものと「紫外線散乱剤」を含むものの2つに分けられます。

「紫外線吸収剤」は高いSPF値の製品には必ず含まれている成分で、皮膚の表面で紫外線を吸収し、化学的にエネルギーと変えて紫外線が肌の内部に入るのを防ぎます。紫外線の防御力が非常に強いことがメリットで、無色透明のため肌につけても白く浮くこともなく、塗り心地もサラサラとしており、汗にも強いです。デメリットは肌の負担が大きいことです。少し専門的になりますが、内容成分のt-ブチルメトキンジベンゾイルメタン、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル、オキシベンゾン-3等は有機化合物であるため、人によっては肌に刺激を感じることがあります。また化学変化が起こるにつれて効果が弱まるため、こまめに塗り直す必要があります。最近では肌の刺激を極限に控えた紫外線吸収剤も出来てきました。技術開発により、マイクロカプセル等で紫外線吸収剤をコーティングして直接に肌に刺激を与えないようにする商品が登場して、敏感肌の方でも安心して使えるものも増えています。

「紫外線散乱剤」は肌の表面で紫外線を跳ね返すことで紫外線防御をするものです。内容成分は二酸化チタンや酸化亜鉛等が多いです。メリットは紫外線吸収剤と違い、ほとんどが「ノンケミカル」と表記されているように有機化合物ではないので、肌への負担が少ないことです。紫外線吸収剤のよう化学反応も起こしませんので肌への刺激も少ないです。ただデメリットとして、白浮きしたりベタベタする等、使用感が悪いことや、汗に弱いことが挙げられます。最近では粒子を非常に小さくナノ化することで、白浮きを改善した商品も出来てきました。

一般にはしっかりと日焼けを防ぎたい場合は紫外線吸収剤を配合した防止効果が高い日焼け止めを、肌への負担を軽くしたい場合は紫外線散乱剤のものを使用すると良いと言われていますが、前述のように技術革新の成果で、肌の弱い方でも使用できる紫外線吸収剤の商品も多くなりました。肌の反応には個人差がありますので、肌が弱くても紫外線吸収剤に問題の無い方もいらっしゃれば、反対に比較的肌の強い方でも紫外線散乱剤で肌荒れを起こす方もいます。どちらが良いというのではなく、成分をよく確認した上で、使用する場所やシーンに応じて、ご自身に合うものを選びましょう。

例えば海や山の紫外線の強い場所に行く場合は、やはり紫外線吸収剤の日焼け止めのほうが効果がありますし、一方、街に出かける時でしたら肌への負担が少ない紫外線散乱剤を配合した日焼け止めで大丈夫と思います。

参考のために「日焼け止めのSPFとPAの表示について」記しておきます。

☆「SPF」Sun Protection Factor

UV-Bに対する防御指数を表わすもので「日焼け止めクリームを使用することによって、何も使用しない場合の何倍の量をカットできるか」を示したものです。値の大きいほど紫外線のカットの効果が高くなります。

☆「PA」Protection Grade of UV-A

UV-Aに対する防御指数を表わすもので4段階に分けられます。

PA++++ 極めて高い効果がある

PA+++  非常に効果がある

PA++   充分な効果がある

PA+    効果がある

目安は海や山のレジャーでは、SPF50 ++++、日常生活ではSPF20~30 ++とされています。特に屋外のレジャーでは、紫外線防御効果の高い日焼け止めの使用をお勧めします。

 

■内的紫外線ケア-飲む日焼け止め

先の項目で外的な紫外線予防について、日焼け止めを用いることをお勧めしましたが、こちらだけで紫外線を防ぐには限界があります。日焼け止めはこまめな塗り直しが必要になりますが、汗をかく度に塗り直すことには限界があります。そこで注目されているのが「飲む日焼け止め」です。

飲む日焼け止めのメリットには、下記の項目があります。

・日焼け止めの塗り直しを怠った時でも日焼けを防ぐ

・敏感肌等、肌体質に関係なく使える

・ビタミン類、ルティン、リコピン等、天然由来成分のサプリメントのため、副作用がおきにくい

・体の中から紫外線のダメージをケアする

紫外線は肌表面だけではなく、浴びると体内に活性酸素が発生して細胞を傷つけます。

活性酸素が過剰に発生すると肌のバリア機能を低下させ、皮膚癌の原因や光老化を引き起こします。飲む日焼け止めには、体内に発生した活性酸素を低下させ、細胞のダメージを防ぐ有効成分が配合されています。服用は紫外線を浴びる前にします。大体30分後位から効力が発揮されますが、種類によって紫外線防御力や作用継続時間は異なるため、生活環境や用途によって選ぶのが良いでしょう。

日焼け止め化粧品の弱点を補うために用いたり、海や山等、極度に紫外線が強い屋外では、外的内的双方の日焼け止めを併用することもお勧めです。

 

■日常生活での紫外線予防

紫外線は晴れの日ではなく曇りや雨の日でも降り注いでいることを述べましたが、UV-Aはガラスを通過しますので、昼間の室内や車中でも紫外線を浴びることになります。昨今はカーテンやガラスに紫外線カット効果があるものも多く出ていますので、対策として用いることも一考です。

外出時にはUVカット効果のある帽子、日傘、さらには手袋等も活用しましょう。紫外線防止に効く色として、吸収力では黒や青、赤等の濃い色、反対に白や黄色の薄い色は反射する力があるそうです。

またファンデーションやフェイスパウダー等の化粧品にも少なからず紫外線防御の効果があります。ほとんどの商品にはUVカットの表示はなくても紫外線散乱剤と同じ効果がある成分が含まれています。お化粧をすることも紫外線予防につながるのです。

 

■基礎化粧品やサプリメントによる紫外線ケア

もしも紫外線を浴びてしまったら、美白作用のある薬用の化粧品でケアすることをお勧めします。たくさん浴びた時にはたっぷりの量を用いましょう。またビタミンC等の抗酸化作用のあるサプリメントも内的ケアに役立ちます。ただしサプリメントはあくまで補助的なものですので、なるべく食品から有効成分を摂取することが理想です。

■紫外線ケアにお勧め食事

☆美肌の有効成分としては下記が代表的なものとして挙げられます。

・シミ、そばかす予防:ビタミンC

・肌荒れ予防:ビタミンB2、ビタミンE、βカロテン、

・抗酸化作用(活性酸素除去) :リコピン、アスタキサンチン、エラグ酸

 

☆各有効成分の主な働きと、多く含む食物を紹介します。

・ビタミンC  メラニン生成を抑制、抗酸化作用、コラーゲンの合成を促進

果物(イチゴ、ミカン、レモン、キウイ、スイカ 等)

野菜(カリフラワー、ブロッコリー、ホウレン草、ピーマン、ジャガイモ等)

ローズヒップティー

※水溶性のため調理中に水に溶けだすことがあります。葉野菜のものは熱にも弱いので加熱しすぎは禁物です。ただしジャガイモのビタミンCは熱にも強いので加熱しても大丈夫です。

ビタミンEの吸収を助ける働きがあるため同時に摂取するとより効果的です。

・ビタミンB

ビタミンB群は細胞の再生や成長の促進、皮膚の新陳代謝を高める働きを持ちます。

中でもB2は新陳代謝の促進、皮膚や髪の再生の補助、粘膜の保護等の働きがあります。

レバー類( 豚、牛、鶏の各レバー)

魚介類(うなぎ、ずわいがに、いくら、たらこ 等)

野菜(アボカド、ホウレン草 等)

卵、乳製品

※水溶性のビタミンですので水への流出を注意してください。熱には強いのでスープ等にして煮汁も摂るとロスが少なくてすみます。

 

・ビタミンE

強い抗酸化作用があります。

野菜(アボカド、カボチャ、ピーマン、ブロッコリー、ホウレン草 等)

魚介類(あんこうの肝、すじこ、たらこ、かずのこ、ほたるいか 等)

ナッツ類

※脂溶性のビタミンですので油との相性が抜群です。油を使って調理すれば吸収がよくなります。

 

・亜鉛

細胞の発育促進や修復に係わり、皮フを健やかに保つのに重要な成分です。

新陳代謝や免疫力を高める作用もあります。

魚介類(牡蠣、かに、ほたて貝 等)

※ナッツ類や乳製品にも含まれているので間食にこれらの食品を摂るのもお勧めです。

・βカロテン

免疫機能を高め活性酸素を除去して、肌を強くする効用があります。

緑黄色野菜(ニンジン、ホウレン草、カボチャ、モロヘイヤ、ブロッコリー 等)

※脂溶性で脂質と一緒に摂取すると吸収が良くなりますので、油で炒める、ドレッシングをかける等の工夫をしましょう。

 

・リコピン

カロテノイドの一つで、野菜等の赤色の色素成分。抗酸化作用がβカロテンの2倍以上、ビタミンEの100倍以上と、非常に抗酸化力が強いです。

野菜、果物(トマト、スイカ、柿、赤いパフリカ、グレープフルーツ 等)

※脂に溶けやすい性質があり、熱にも強く煮たり炒めたりしても、成分が大幅に減る心配はありません。

 

・アスタキサンチン

カロテノイドの一種で、ビタミンCの6000倍とも言われる非常に強力な抗酸化作用を持ちます。紫外線を浴びることによって発生する活性酸素から肌を守り、コラーゲン、エラスチンの分解を防ぎ、光老化を防ぎます。

甲殻類(えび、かに 等)

魚介類 (紅鮭、いくら)

※脂溶性ですので油で調理すると吸収率が高まります。また抗酸化作用のある食品を一緒に摂ると相乗効果でさらに効果がアップすることが期待されます。ポリフェノール、リコピンを含む食物と一緒に食べると良いでしょう。

 

・エラグ酸

 ポリフェノールの一種で優れた抗酸化作用があり、メラニンの生成を防ぐ美白効果が抜群です。果物(イチゴ、ベリー類 ザクロ 等) ナッツ類

上記の紫外線予防に有効な成分を含む食品を意識して摂ることも、内的なケアにつながります。ただし、あまり偏って同じものばかり食べることは禁物です。あくまでもバランスのよい食事が基本です。

 

■紫外線ケアは継続が大切

以上、紫外線予防の全般についてお話をしました。いつまでも若々しい美肌を保つには、どれだけ紫外線ケアが大切か分かっていただけたと思います。加齢とともに増えるシミやシワはほとんどが過去に浴びた紫外線によるものと言っても過言ではありません。

特に中高年の方は、今ほど紫外線予防の必要性が言われなかった若い頃に日焼けした方も多いと察します。ですが今さら…と諦めず、今から紫外線の予防をしてください。その努力はこれからの肌に現れます。紫外線ケアだけに係わらず肌を美しく保つには、継続が大切です。日焼け止めクリームやお化粧を当たり前の生活習慣にしてしまえば、苦にもならず続けられると思います。5年後10年後の将来の肌のために、今日から紫外線ケアを怠らないようにしましょう。

 


松田七瀬 マエダクリニック勤務 http://maedacl.jp/
経歴 平成17年 大阪市立大学医学部付属病院 初期臨床研究医
平成19年 大阪南医療センター皮膚科
平成20年 大阪府立呼吸器・アレルギー医療センター
平成25年 シロノクリニック 大阪市内皮膚科クリニック等で勤務
所属 日本皮膚科学会認定専門医 日本抗加齢学会専門医
日本皮膚科学会 日本美容皮膚科学会 日本アレルギー学会
日本皮膚アレルギー・接触皮膚炎学会 日本抗加齢医学会

2017.04.12 column