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肌のアンチエイジング 肌と血管の関係

お肌のアンチエイジングは、体の様々な部位と関係しています。前回は腸との関係についてお話をしましたが、今回は血管に焦点を当ててお話をすることにします。

命に危険がある心疾患のほとんどが、血管の老化により引き起こされるものです。ですから、若々しい血管を保つことは、何よりも健康長寿に必要不可欠な大切な要素になります。
見た目年齢にはお肌の色つやが大きく影響しますが、血の巡りが良く健康な方の頬はピンクで血色も良いため、相対的に若く見えます。また中高年の悩みの一つ、目の下のクマも血流、すなわち血管に関係しています。お肌のターンオーバーも血流が良いとスムーズになるため、血管年齢の若い方は、お肌のくすみも少なく若々しく美しいお肌を保つことができると言えましょう。
人は血管から老いる…という言葉もあるほどに、血管は私達の健康、美肌に非常に大きく関わっています。いつまでも若々しい血管を保つにはどうすればよいのか?予防とケアの方法をご紹介しますので、参考になさって日常生活に取り入れていただければと思います。

 


■なぜ血管は老化するのか?

昨今は欧米型の生活習慣の影響のせいか、日本人の血管の老化が早くなっているという説もあり、テレビの健康番組等でも血管についてよく取り上げられています。
血管を老化させる要因は様々ありますが、大きなものに喫煙、高血圧、脂質代謝異常、高血糖が挙げられます。

 

☆喫煙
タバコの煙に含まれるニコチンは体内に入ると血管を収縮させます。その結果、血圧が上昇し、高血圧や、動脈硬化が引き起こされます。喫煙者は非喫煙者に比べて狭心症や心筋梗塞を起こすリスクが約3倍に高まり、1日に20本以上吸う人は、心筋梗塞による死亡率が1.7倍に上がると言われます。もちろんお肌にも喫煙はよくありません。私の臨床経験からも喫煙されている方は、肌ツヤが悪く、くすんでおられる方が多いように感じます。

 

☆高血圧
血圧が高いと血管内皮細胞を傷つけます。脂質代謝異常によりLDLコレステロールが増加すると血管の壁にたまり、酸化されて変性すると動脈硬化が進行します。動脈硬化が進むと命に関わる病になる可能性が高くなります。
血管内皮細胞を傷つけることは血管の老化を早めることに他ありませんので、自ずとお肌の衰えにもつながっていきます。

 

☆糖質代謝異常&高血糖
血糖値が高くなると血液中に余った糖質は、たんぱく質と結び付いて、終末糖化物質(AGEs)と呼ばれる物質に変わります。このAGEsは活性酸素を発生させて血管を傷つけます。さらに血管壁に入り込み、すでに入り込んでいたLDLコレステロールを酸化させ、動脈硬化をより進めてしまいます。
このように余分な糖がたんぱく質と結び付いてAGEsを生み出す反応を「糖化」と言います。糖化は肌のコラーゲンをはじめとした、たんぱく質でも生じて、お肌に付着して黄ぐすみの原因となったりします。肌の弾力が失われてハリの低下にもつながる恐れもあります。

 

■血管の老化によるお肌のトラブル

血管が衰えると血流が悪くなります。手足の先まで血液が行き届かなくなり、冷え性になります。それだけではなく全身の臓器や細胞は血管から栄養や酸素を受け取っているため、新陳代謝が悪くなり、乾燥肌になったり、シミやくすみが出来やすくなります。またコラーゲンの栄養も損なわれるためシワ等の原因にもなります。

健康な日本人女性の顔のシミが、内臓肥満を介して頸動脈硬化と相関を示した興味深い研究結果も出ています。昨今、薄毛に悩む女性が増えていますが、血管が衰えると頭皮への血流も滞るため、抜け毛や白髪等、髪の老化にもつながります。

 

■ゴースト血管の肌への影響

皆様も「ゴースト血管」という言葉をよく聞かれると思います。このゴースト血管も肌の老化に関わってきます。毛細血管は動脈と静脈をつなぐ細い血管で血管全体の9割以上を占め、全身に網の目状に張り巡らされています。毛細血管は周囲の細胞に栄養や酸素を届け、二酸化炭素を回収する役割があります。ところが毛細血管は老化とともに劣化し、やがて血流がなくなりゴースト血管となってしまいます。ゴースト血管は45歳頃から増え始め、60代になると毛細血管は30代の時に比べ40%減少すると言われています。
一般的には手足が冷たい冷え症の人は、ゴースト血管になりやすいと言われています。ハイヒールや体を締め付ける衣類もゴースト血管になる可能性がありますので、お洒落も大切ですが、高いピンヒールやピチピチのスリムなパンツ等は、なるべく避けたほうが良いかと思います。

ゴースト血管は乾燥肌やくすみにもつながります。また目の下のクマが目立ったり、舌の裏が紫色がかったりしている人は、毛細血管が弱くなってゴースト血管が増えている可能性があります。対策としては指先や、ふくらはぎのマッサージがあります。エステサロン等でマッサージをしてもらうのもよいですが、毎日5分程、ご自分でケアするだけでも効果はありますので続けてみてください。

 

■更年期での注意点

更年期には女性ホルモンのエストロゲンが減少して血管内皮の働きが弱くなり血管内容量が増えることで高血圧を起こしやすくなります。また総体的に男性ホルモンが多くなることで交感神経が活発化して、血圧を上昇させるホルモンが増えることになります。さらには更年期に伴うイライラやストレス等も加わり、高血圧を引き起こしやすくなります。
先に述べましたように高血圧は血管年齢の老化にもつながりますし、更年期高血圧は放置すると慢性的な高血圧となり脳卒中や心筋梗塞の原因ともなります。疑われる方はまず毎日の血圧を測定してみて、内科や婦人科に受診されることも一考です。

 

■自分の血管年齢を知るには?

血管年齢は人間ドックや健康診断等の血管年齢検査で血管の壁の固さをはかり、血管が何歳程度なのかを数値化して知ることができます。簡単なものでは手の人差し指をセンサーに入れるだけで血管年齢を推定する機械があります。昨今は血液と血管を専門に調べてくれる医療施設もありますので、血管年齢が気になる方は、一度、専門機関で測定してもらうのもよいでしょう。もしも年齢より老化が進んでいても、下記に記す食生活や生活習慣の改善で、若い血管を取り戻すことができますので、諦めずに取り組んでいただければと思います。

 

■血管のアンチエイジングにつながる食品

血管年齢を若がえらせる食品として、黒酢や黒豆、鯖や鰯等の青魚、納豆や梅肉エキスが言われています。一般的に黒い食品には抗酸化力のあるポリフェノールが含まれているものが多く、青魚には後に記しますヘルシーな脂質が含まれています。納豆にはナットウキナーゼという血栓を溶かす効果がある物質が含まれており、梅肉エキスにも優れた抗酸化力があり、血圧安定や血液改善の効果が言われています。

他にもトマトに含まれるリコピン、玉ねぎやネギ、ニンニクに含まれる硫化アリル、青魚のDHAやEPAが挙げられます。いずれもなるべく加熱せずに摂取するのが効果的です。
さらには野菜や果物がもつフィトケミカルと呼ばれる成分が抗酸化力をもつことが解明されました。ブルーベリーやブドウ、緑茶等のポリフェノール類や、ニンジン、カボチャ、トマト、ほうれん草などのカロテノイド類などがおすすめです。
これらの食品を意識して摂ることで血液をサラサラにして、しなやかで若々しい血管を目指してください。

 

■ヘルシーオイルやスパイスの活用

脂質は肥満や動脈硬化を引き起こすと敬遠されがちですが、適度な脂質は健康を維持し、若さを保ちます。トランス脂肪酸が含まれるマーガリン、スナック菓子やインスタント食品はなるべく避け、オメガ6系脂肪酸であるサラダ油やコーン油も控えめにしましょう。オリーブ油や紅花油などのオメガ9系脂肪酸は適度に使うようにしてください。アマニ油やエゴマ油は魚介類の油と同様の成分でEPAやDHAに変換されるので、サラダや飲み物に少量加えるのが効果的です。

塩分が過剰になると高血圧になり血管に負担がかかりますので、調理にも気をつけ摂りすぎないように注意しましょう。塩分を控える変わりにスパイスを活用して味付けをすることがおすすめです。シナモンやヒハツ(沖縄では一般的な胡椒ににたスパイス)に含まれるピペリンは毛細血管にあるTie2(血管を健康に保つ成分を受け止める働きがある)を活性化させると言われています。これらのスパイスも過剰になりすぎない程度に摂ると良いでしょう。

最近の研究では1日2~3杯のコーヒーには血栓を作りにくくする作用があると分かってきました。またビタミンCやポリフェノールを多く含むルイボスティーも良いので、食後や食間の飲み物として取り入れましょう。

 

■血管の若返りに注目の「NO」

近年、血管を若がえらせる効果があるNOが注目されています。NOとは一酸化窒素のことで、この物質を増やすと血管力が高まり、血管がしなやかになります。NOを増やす方法として、まず大切なことは適度な運動です。加齢とともに歩くことが億劫になりがちな方も、少し車の利用を控えて適度に歩くことを心がけてください。さらには階段を意識的に使うこともおすすめです。NOの生産を増やすには食事も大切です。基本はたんばく質と抗酸化物質が豊富な食品を摂ることで、もちろん青魚もおすすめです。青魚を手軽に摂りたい人は鯖や鰯の缶詰を活用するのも良いでしょう。先日の健康番組では鰯の缶詰ときゅうりを一緒にいただくとより効果的と言っていました。血管老化が気になる方は試してみられては…と思います。

 

以上、血管とお肌の関係について述べました。最後に付け加えたい血管老化の予防方法は、良質な睡眠とストレスを溜めずに自律神経のバランスを整えることです。これらのことは健康全般に言えることで、当たり前のことではあるのですが、現在社会では本当に難しいことです。
40度くらいの温いお風呂に10分程浸かることや、好きな音楽を聴くこと、アロマオイルの活用等が言われていますが、ストレスの解消法は人それぞれです。皆様もご自身のストレス解消法をみつけてください。そしての血管の老化を防き、美しいお肌を保つように努めましょう。

 


~皮膚科医師 白木 美保~

西奈良メディカルクリニック メディカルフィットネス登美ヶ丘勤務
http://www.nishinara-med.com/staff.html

皮膚の事は何でもお聞きください。 皮膚がより健康な状態で年齢を重ねていけるようにお手伝い致します。美容に関するご相談も、お気軽にどうぞ。同じ子育て中の身ですので、お子様の皮膚トラブルやスキンケアなど細かな事でもご相談して下さい。

■経歴関西医科大学卒
関西医科大学皮膚科入局
関西医科大学滝井病院 皮膚科
関西医科大学枚方病院 皮膚科
H26~現職(医療法人悠明会)

■担当
・皮膚科の診療
・日本皮膚科学会皮膚科専門医
・日本美容皮膚科学会
・日本小児皮膚科学会

2019.06.09 column