世界一健康な国、イタリア。 健康的に長く生きるイタリア人の、その秘訣を探る!
年も変わり、お祭り気分が終了し、それぞれが平穏そうに日常生活に戻ってはいるものの…今日も、我が家の真下でイタリア人男性2人が激しく口喧嘩をしていた。それも老人同士である。この国へ来てからよく見かけるのが、道端で派手に口喧嘩をするイタリア人。
とにかく、ここ南イタリアの土地柄からか、『怒りなくして前に進まず!!』である。怒りこそが物事を前に推し進めるエナジーとして過大評価された文化のように見えるのである…
とは言え、前の日に言い争いをしていた人同士が、翌日には何も無かったように仲良さげに話していることもありますし、さっきまでカンカンに怒っていた人が、今は鼻歌を歌いながら笑っている…といったことも普通にありえます。
私的には、ここで言う良き暮らしをするためには、何かと知り合い繫がりで万事が解決して行くことが多いのです。怒ったまま敵を作ったりせずに沢山の人と仲良くしておいた方が自分にとっても得策と知っているからでしょうか!?彼らの切り替えの速さは、私的には巧みな世渡り術としか見えません。
こんな彼らを毎日見ていると、『イタリア人ってストレスなんて溜め込まないし、ノイローゼなんてものにもなりにくい強豪な人種だよな…』と、決めつけ目線で深く納得してしまうのですが!
■世界一健康な国、イタリア
さて、アメリカの大手総合情報サービス会社のブルームバーグ※1(Bloomberg L.P.)による『世界で最も健康な国』調査で、全世界163ヶ国の中で最も健康な国として発表されたのがイタリアでした。
それによると、イタリアには様々な歴史背景があり、未だ不景気が続き若者の失業率は4割近いにもかかわらず、イタリア人は健康な体を作り続け、近年では平均寿命は80歳以上となっているとのことです。
同ランキングでは、平均寿命だけではなく、各国における死因、高血圧症、喫煙率、栄養不足などの健康リスクを基準に作られていて、それらのデータが分析された結果、
- 1位 イタリア
- 2位 アイスランド
- 3位 スイス
- 4位 シンガポール
- 5位 オーストラリア
- 6位 スペイン
- 7位 日本
となりました。
ちなみに、肥満率の高いアメリカは34位となっています。
※1 ブルームバーグ(Bloomberg L.P.)経済、金融情報の配信、通信社、放送事業を手がけるアメリカ合衆国の大手総合情報サービス会社
■イタリア人の健康の秘訣は、どこにあるのでしょうか?
指摘されている主な原因は、やはり食生活。
果物、野菜、炭水化物、穀物、魚などを中心とする地中海ダイエットのおかげで、イタリア人は健康な体を作り続けていると言われています。
その理由として、日常生活においてオリーブオイルと赤ワインを摂取することも健康に好影響を与えているとされているのと、イタリアの国民的飲み物のエスプレッソの消費も健康に好影響を及ぼしているという研究結果もあるのです。
エスプレッソの研究は、イタリア地中海神経学研究所(NEUROMED)とローマ・イマコラータ皮膚病研究所のチームの研究によるもので、イタリアモリーゼ州の男性住民7000名を対象とした疫学調査が実施されました。4年間の追跡調査の結果1日3杯以上のエスプレッソ摂取者は、コーヒーを飲まない者に比べて、前立腺ガンの発症リスクが53%も低かったことが発見され、エスプレッソの消費が前立腺ガンの予防に効果的であることが判明した、というものです。
平均寿命だけを基準にすると日本をはじめアイスランドやスウェーデンなど、イタリアと同じあるいはイタリアよりも長生きする国もあるそうですが、地中海の伝統的な食生活や喫煙率の減少のおかげで、イタリア人は『長く』生きるだけでなく『健康に』長く生きる機会を手に入れたと言われ始めています。
と、このような素晴らしいデータ結果はさておき、世界一の長寿国がイタリアとは、私的には現実的には信じられない部分もあります…と言いますのも、日本食に比べるとイタリア料理は油たっぷりなものも多くカロリーもかなり高めなわけですし、甘いものが大好きなイタリア人もかなり多いように思うんですけれどね…
それでも、イタリア人は健康な国の第1位に選ばれ、平均寿命が80歳以上となっているという…そのイタリア人の真の健康の秘訣は、きっと他にも何かあるのではないかと私的に分析してみることにしました。
■長寿研究家が挙げる9つの項目
出典 CORRIERE DEL MEZZOGIORNO SALERNO CRONACA
アメリカの長寿研究家のダン・ペットナー氏が挙げているのが、世界の長寿地域には、いくつかの共通項が見られるとのこと。それが、以下の項目であります。
- 日常的に体を動かす
- ストレスが少ない
- 腹八分目に抑える
- 野菜中心の食生活
- 赤ワインなどの適量のお酒をたしなむ
- 社会グループに参加している
- 生きがいがある
- 宗教活動に参加する
- 家族間の絆が深い
さて、カンパーニァ州サレルノ県の南部に位置するチレントは、美しい海岸線と小高い山々が連なる自然豊かな土地で、イタリア人の健康的な体を作り続けている地中海ダイエットの発祥の地でもあります。海と山がもたらす恵みから生まれる伝統的な食材や、四季折々の自然と共存する豊かなライフスタイルを保ち続けているチレントは、現在ナチュラル派志向のイタリア人の間でも話題になっているロケーションであり、まさに長生き出来そうな風土と言えるでしょう。
そして事実、チレントは、地域の平均寿命は男女合わせて87歳、住民7万人ほどの中に百寿者が数百人いるという世界一の長寿地域であるそうです。
しかしそれは、風土によるものだけではなく、この地域の高齢者たちの生活環境を見ると、上記の長寿地域の項目を漏れなく満たしていることが判明しています。
まず、この地域の伝統として、青魚や野菜やオリーブオイルを中心に塩が少な目の食生活と、割合的に昼に比べると夜は控えめな食事にするという習慣。毎日赤ワインを少しずつ飲んできた人が多いのも特徴です。それと、若い頃からよく働き、傾斜の多いこの土地を歩くことが習慣ということなども上記に適合します。
家族関係も密で、地域全体が家族のようで、気の合う人と日々交わって会話などを楽しんでいる。だからストレスも溜まらない…などなど。
と、長寿研究家のダン・ペットナー氏の指摘と見事に重なるのでありました。
その結果多くの人が病気知らずで、米伊の研究結果では、この地域の高齢者の多くが精神的に若々しいばかりでなく、がん、アルツハイマー、心臓病、脳血管疾患、糖尿病とも無縁であることも分かったそうです。
食生活に関して言えば、地中海食が動脈硬化の予防に適していることは医学会の共通認識で、認知機能の低下を抑える効果があることも指摘し、オリーブオイルとワインを別にすれば、地中海食と和食には共通点が多いことも指摘されています。
と、このように長寿研究家や医学会といった難し目の内容は、充分に分かったような気がします…
が、ここで私が特に同感したことが最後の3つです。
一つ目は、『生きがい』についてです。
まず、イタリア人はとにかくお洒落が好き!ということは、世界的にも有名な話です。イタリア人は、お金をかけずにおしゃれを楽しむコツを、小さい頃から自然に身につけている人種とでも言いましょうか。他者と交流するためには、身だしなみはとても大切と考えるみたいです。
それも自然体でお洒落に気を遣い、着飾り、気の合う人と日々交わって冗談交じりで会話を楽しむこと、そういった振る舞いこそが内面が活き活きしてくる健康の秘訣に直結しているように見えるのです。
そして二つ目と三つ目、宗教活動と家族間の絆。
現在でもバチカン市国を地理的に内包しているイタリアは、カトリック教会が生活に根付いています。世界には数え切れないほどの宗教がありますし、宗教の価値観も多少違うかもしれませんし、その国の人口の殆どの人が何かの宗教を信仰しているということは珍しいことではありません。
ここイタリアは、国民の約75%(イタリアの記事に基づき記載)がキリスト教のカトリック信者であるとのことです。宗教の話は、とても複雑ですし簡単には言い切れません。ですがとにかくキリスト教の長い伝統があるイタリアでは、生活の中の習慣が伝統的な意味で、人生の節目には教会で儀式をするのが当たり前と考える人が大多数です。
そして、その宗教活動と家族愛に関して言えば、日本人の私には正直重いと感じることもあります。が、宗教も家族の絆も心から大切に思い、その思いの深さをストレートに表現する国民であることには、常に感心し羨ましくも思えたりします。
家族愛で言えば、過保護なマンマとパパの愛情の重さ。いくつになっても子供は子供、と1日最低1回は電話でお互いの近況を語り合う心配症なところ、などなど…たまに窒息しそうに重い…と、感じることもありますけれど、ここイタリアでは、ごく普通なことのようです。
どうですか?
長生きの秘訣、何か気になるところはありましたか?
もし日本だったらとは考えず、イタリア人のように考えて、イタリア人と同じようにしていくと、健康的な長生きの秘訣にはなるのかもしれません(笑)
ですが、日本で暮らすのに、長年の習慣もありますし、それを変えるのは簡単ではありませんよね。
とにかく私が感じるのは、イタリア人の原点は、常に何事も自分のペースで物事を進めることに関係する気がします。
他の人のことを考えたり遠慮したりしていると、逆にこちら側が何を考えているのか分からない人だと思われたりするくらいですから…。シンプルに自分がどうしたいかどうかだけを考えて物事を決めていく彼らのスタイルを目の当たりにすると、それ以上でもそれ以下でもない自分を表現するシンプルさが、うらやましいような気がすることがよくあります。
イタリアでは日本のように言わなくても相手が察してくれることはありません。
遠慮ばかりしているとストレスばかり溜まるため、まずは主張。それで喧嘩になろうがお構いなし、とにかく自分の主張を通すことが先決なのですから!
さて、まずはイタリア流で急がず自分の出来る範囲で気になったところから始めてみるのも良いかもしれません。
少しくらいわがままに見えても、これが健康的な長生きの秘訣なのですから、皆様も堂々と取り入れて行きましょうね!!