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「小じわ」&「肌のキメ」のケア

加齢による肌の悩みのトップはやはりシワだと思いますが、シワは深いもの以外に、はっきりとは目立たない小じわがあります。こちらは比較的若い年齢層から出きてきます。また、小じわとともに肌のキメについて悩んでおられる方も案外多いとお察しします。

今回は小じわと肌のキメ、さらにはキメにも少し関係する毛穴について、美容皮膚科の視点からケア方法や治療等をお話させていただきます。以前のシワのコラムと重なる部分もありますが、おさらいの意味を込めて読んでいただければと思います。

 


■小じわの原因

シワとは肌にできる溝のことです。最初は浅い小じわとして表れ、年齢を重ねるにつれて深くなっていきます。目尻、額、口元のほうれい線等、顔の筋肉をよく動かす部分から順に表れてきます。笑ったり、微笑んだり…筋肉の運動の繰り返しで出来る表情じわと、加齢や紫外線、乾燥等、環境的要因や生活習慣が原因でできる外因性のシワに分けられます。

次にシワの大きな原因について述べます。

①乾燥

小じわが出来る主な原因の1つが皮膚の乾燥です。表皮の角質の水分は皮脂やセラミド、天然保湿因子等の物質で守られています。この角層内の水分が不足すると肌は乾燥してきます。正しく保湿ができて肌が潤っていれば、肌は自ら保湿物質を作り角質内に水分を蓄えておくことができますが、角層の水分が不足し、バリア機能が弱まると、水分が蒸発して肌内部の潤いも奪われてしまいます。特に皮膚の薄い目元や口元は乾燥しやすいです。

②紫外線

シワのコラムの時にお話しましたが、肌の老化の原因の80%は紫外線です。紫外線はシワにも大きく関わっています。紫外線には大きく分けてUVAとUVBがあることは皆様もご存知と思います。特にUVAは肌の奥の真皮層にまで達し、ハリや弾力をもたらすコラーゲンやエラスチン等の組織を傷つけます。これらの組織が変性するとシワができやすくなるのです。

紫外線は小じわの要因にもなりますが、光老化によるシワは、より深くはっきりしているのが特徴です。日本でも北国よりも南国のほうが、比較的深いシワが目立つ方が多いのは、紫外線が強く日照時間も長いせいと考えられます。

③加齢

20代から肌のコラーゲンの量は年々少しずつ減少します。30代40代と進むにつれ、さらに皮脂分泌の不足、水分の減少、コラーゲンやエラスチンの機能低下等により、肌の弾力が失われてシワができやすくなります。加齢に伴うシワは光老化によるシワに比べて表面的で浅いことが特徴で、小じわもその一種です。

④表情じわ

前述しましたように、加齢により肌の弾力が失われてくると、笑ったり、目を細めたり、顔をしかめたり等、表情を作る際の筋肉の運動の繰り返しが、徐々にシワとなって刻まれていきます。眉間や目尻、額のシワが代表的なものです。

⑤喫煙

喫煙は真皮のコラーゲンやエラスチンを変形させシワの原因になります。何度もコラムに書いていますが喫煙は美容に良くないので、女性はなるべく控えていただきたいです。

 

■肌のキメについて

肌には細かい線が網目を作るように沢山あります。キメとは肌の溝である細かい線の皮溝(ひこう)と、盛り上がりである皮丘(ひきゅう)で囲まれた肌表面の凹凸のことを言います。後ほど毛穴に関しても述べますが、皮溝が交わった部分に存在しているのが毛穴です。

皮溝が細く、皮丘が小さく、しっかりとした溝があるふっくらとした状態を「キメが細かい」と言い、逆に皮溝が太くて皮丘が大きく、水分が不足していて、肌が硬くなった状態を「キメが粗い」と言います。皮溝の太さや皮丘の大きさに関係なく、皮丘がはっきりとしている場合は「キメが整っている」と言い、反対に皮丘がぼやけている場合を「キメが乱れている」と言います。

余談ですが実はキメは肌に関する日本特有の言葉らしく、英語等で全く同じ意味を一言で表現することは難しいそうです。ちなみに漢字では「肌理」と書きます。このことは日本人が肌のキメを古くから美肌に大切なもの…と感じてきた表れかもしれませんね。

 

■肌のキメの改善は可能なのか?

残念ながら、肌のキメの細かさや粗さは持って生まれた肌質ですので、どのように頑張ってスキンケアをしても、大きく変えることは難しいです。

しかしキメが整っているか乱れているかは、スキンケア次第で変えることは可能です。キメが整ったお肌は、より滑らかで綺麗に見えます。もしもキメが粗い肌の方でも自宅でのスキンケアや、専門クリニックでのトリートメント・治療等で、美しく見える肌を目指せますので、決して諦めないでいただきたいです。

 

■キメと毛穴の関係について

キメとともに美しくツルンとした肌の若見えに大きく関係するものに毛穴があります。美容関係のCMのコピーでも毛穴の文字がよく目にしますが、確かに毛穴が開いた肌は、弛んだ印象を与え、老けて見られる原因の一つです。

キメが乱れたり粗い肌は、皮丘がしぼんで皮溝が太く浅くなっている場合が多く、皮丘と皮丘の間隔が広がってしまい、毛穴が目立った状態になります。逆にキメが細かく整っている肌は、皮溝が深く皮丘がふっくらとしているので、皮丘と皮丘の間隔が詰まった状態になるため、毛穴が目立ちにくくなります。このように毛穴自体は大きくなったり小さくなったりする訳ではなく、肌のキメの状態によって目立ちやすさが変わってきます。

 

■毛穴が目立つ肌の改善方法

生まれ持った肌質の問題はありますが、一般的には皮脂線が発達している部位は分泌が過剰になり、キメが粗く、毛穴が目立ちやすくなります。ですから皮脂線が発達しているおデコや鼻の周囲は、どうしても毛穴が目立ちやすい傾向にあります。

また髭や産毛が多かったり、濃かったりする人も毛穴が目立ちやすいです。ただ毛穴を気にして産毛をそることは肌には良くありません。毛剃りは肌を傷つけてしまうリスクがあり、非常に刺激が多い行為です。キメが乱れたり、乾燥の原因にもなりますので注意しましょう。毛穴が目立たないツルンとした肌になるには、脱毛のほうが有効です。

 

■小じわとキメを改善する美容皮膚科の治療

美容皮膚科で行う小じわやキメを整える治療は、肌のハリや弾力を保つコラーゲンやヒアルロン酸を増やすための施術がメインになります。方法は様々ですが、以下に一般的なものを紹介します。

①ロングパルスYGAレーザー

ロングパルスYGAレーザーを照射することでコラーゲンの生成を促進する方法です。小じわの改善の他に、ピーリング効果により肌のキメを整えることができ、くすみや毛穴の開きの改善効果も期待できます。施術直後のダウンタイムはなく、痛みも少ないため、気軽に受けやすい治療です。

②レーザートーニング、レーザーフェイシャル、フォトフェイシャル等

①のロングパズルYGAレーザーほどの直接的な作用はありませんが、シミやくすみの治療に使われるフォトフェイシャルやレーザー治療と言われている施術方法は、繰り返し照射を行うことで、二次的に肌表面のコラーゲンの生成が促進して、キメが整う効果が期待できます。これらの治療もダウンタイムが無く、気軽に受けていただけるものです。

③再生療法

PRP(多血小板血漿)を肌に注入する方法です。血小板には成長因子という物質が含まれています。この成長因子の働きで、肌の中に存在するコラーゲンやヒアルロン酸の生産が活発になり、シワやキメ等への効果が見込めるとされています。この治療法は自分自身の血液を使用するため、ほとんど副作用の心配が無いことがメリットです。ただ、顔の数ヶ所に注入するため、直後は内出血や少し腫れる可能性もあります。

④ヒアルロン酸

 

お隣の韓国で大流行し、日本でも施術されるようになった水光注射という施術方法があります。水光注射とは、ヒアルロン酸等の美容液を細かく皮膚の浅い層に注入して、肌のキメやツヤの改善を図る施術方法です。専用の自動皮膚下注入システムで、肌の状態にあわせて、注射針の長さや注入する深さ、量、皮膚吸引タイミングをコントロールして、美容成分を皮膚の浅い層に均一的に注入します。注入治療になりますので、数日は赤みや腫れ、内出血等が出る可能性があります。

 

■小じわのセルフケア

小じわができてキメが乱れているということは、肌が乾燥していると考えられます。つまり小じわの改善には、肌の水分を保つためのスキンケアが必要になります。セラミド、ヒアルロン酸、コラーゲン、天然保湿因子等は、肌の保湿に大きく影響を与える成分ですので、これらが含まれた基礎化粧品を使うことをお勧めします。

乾燥等により一時的にできている浅い小じわでしたら、保湿化粧品の適切な使用だけで改善できる可能性もあります。また目元だけが乾燥している場合は、普段のスキンケアにアイクリームや目元専用の美容液をプラスするだけで、効果が期待できるでしょう。

 

■キメや毛穴を整えるセルフケア

キメが乱れる一番の原因はターンオーバーの乱れです。加齢とともにターンオーバーが遅くなると、古い角質がいつまでも排出されず、肌がくすんだり、潤いが失われることでキメが乱れやすくなります。反対にターンオーバーが早すぎでも未熟な角質細胞が肌の表面に出来てしまうため、肌のバリア機能が十分に働かず、肌トラブルの原因となります。

最近では毛穴の汚れや肌のざらつきを解消するために、週に何度もスクラブやピーリング等を行う人もいるようですが、過剰に角質を落としてしまうと、ターンオーバーが早すぎて、却って吹き出物や乾燥等の肌トラブルを招きかねません。また、ターンオーバーを早めてしまう原因に皮脂の酸化があります。皮脂の酸化によりできる過酸化脂質の刺激が、ターンオーバーを早めてしまうことがあるからです。予防としては、日頃から丁寧な洗顔を心がけ、皮脂が浮いてきた際は小まめにティッシュで拭きとる等しましょう。また、紫外線に当たると皮脂は酸化しやすくなるので、紫外線ケアも大切です。

 

■小じわ、キメ、毛穴の状態を整える生活習慣や食生活

①紫外線ケアを徹底する

何度もお話していますように、肌の老化の原因の80%は紫外線によるものです。ご自身のお腹、二の腕や太ももの内側等、紫外線に当たる機会が少ない部位の皮膚はキメも細かく、シワも少なくて綺麗なことでお分かりと思います。美肌を目指す上で最も大切なことは紫外線のケアを徹底することにつきます。意外な落とし穴は天候が悪い日です。雨や曇りでも紫外線は雲を通過して降り注いでいます。日照時間が少なく紫外線の量も少ないと言われている冬でも、日焼け止めは塗るように心がけましょう。肌の真皮層まで到達し、シワや皮膚の弾力低下を引き起こすUVAは窓ガラスも通過しますので、家の中にいても影響を受けます。最近はUVカットのカーテンやガラスに貼るシート等も販売されていますので、それらも併せて活用されるとより効果的と思います。

②保湿ケアを徹底する

保湿をしっかりと行うことで、潤いを保ち、シワの目立たない、ふっくらとした肌を維持することができます。特に小じわは保湿ケアだけでもかなり改善ができます。保湿を高める成分を含んだスキンケア商品を選んで使いましょう。目元には皮脂線が無いので脂質による保湿が働きにくく、水分や天然保湿成分による保湿が中心となります。乾燥しやすく潤わないため、シワができやすくなっていますので、特に充分なお手入れが大切です。高機能の目元専用のケア化粧品が多くありますので、ご自身にあったものをみつけて使ってください。

③肌をこすらない

シミのコラムでも書きましたが、スキンケアの原則として肌はできるだけ刺激を与えないほうが良いです。普段のお手入れでも「肌をこすらない」ように注意しましょう。スキンケアの際に肌をこすった摩察により、キメが乱れてしまいます。さらに肌内部で炎症が起きてメラニンが発生することに繋がります。特にシミや肝斑、傷跡等がある方は摩擦により悪化してしまいます。毎日のスキンケアで肌をこすり続けるとダメージが蓄積してしまうのです。私の見解ではスキンケアやメイクの際に、肌を強く擦っている方がとても多いように見受けます。優しく丁寧なスキンケアを心がけてください。

④充分な睡眠

美容には睡眠が必要不可欠です。肌に充分な栄養が行き渡り、肌の再生が行なわれるのは睡眠中であることは皆様もご存知でしょう。睡眠不足になるとコルチゾールと呼ばれるストレスホルモンが分泌され、大切な美肌成分のコラーゲンやエラスチンを分解してしまいます。睡眠時間は6~8時間程は必要とされていますが、長い睡眠をとるのが難しい方は、ストレスをなくし自律神経のバランスを整え睡眠の質を高めるように努めましょう。

⑤抗酸化作用やビタミンが豊富な食物を摂る

今まで何度も肌に良い食品については述べてきました。キーワードは抗酸化物質とビタミンのCとEです。シミのコラムに有効な成分と食品について詳しく述べていますので参考にしてください。http://o2vita.jp/column/184/

特にビタミンCは最高の美肌成分ですので、積極的に摂ってほしいです。食品ではイチゴ、レモン、キウイのフルーツや、ブロッコリー、ピーマン、ジャガイモ等の野菜があります。なかなか食物だけで必要なビタミンCを摂るのは難しいので、サプリメントも活用されたら良いと思います。

 

 

以上、小じわやキメ、毛穴に関する情報をお話しました。これらのケアをすると、確実に「若見え肌」に繋がるはずですので、即、実行していただきたいです。充分な睡眠や、美肌成分の食生活は簡単なようでなかなか難しいですが、日々の努力とその継続が明日の肌には必要なのです!

 


松田七瀬 マエダクリニック勤務 http://maedacl.jp/
経歴 平成17年 大阪市立大学医学部付属病院 初期臨床研究医
平成19年 大阪南医療センター皮膚科
平成20年 大阪府立呼吸器・アレルギー医療センター
平成25年 シロノクリニック 大阪市内皮膚科クリニック等で勤務
所属 日本皮膚科学会認定専門医 日本抗加齢学会専門医
日本皮膚科学会 日本美容皮膚科学会 日本アレルギー学会
日本皮膚アレルギー・接触皮膚炎学会 日本抗加齢医学会

2019.03.10 column