©2024 AINS-LAB INC.

NEWS

新着情報

  1. ホーム
  2. 新着情報
  3. 肌のアンチエイジング……

肌のアンチエイジングー肌と腸の関係

肌のアンチエイジングのために高価な基礎化粧品を使ったり、美容の点滴・注射等に頼っておられる方は多いと思います。 確かに化粧品や有効成分の点滴等で、それなりの効果は期待できます。ただ…それらのものに頼り過ぎることは少し危険です。なぜなら肌の美しさは身体の健康と大きく係わっているからです。肌が若々しく美しい方は間違いなく身体も健康です。ですから肌のアンチエイジングには、まずは健康であることが第一です。

例えば・顔色が悪い・くすみがある・吹き出物が出きている等の人は体調が整っていないことが多いです。その肌に大きく係わっている臓器に「腸」があります。近年、腸内フローラ(腸内に生息する微生の生態系の意味)研究が進み、腸に生息する微生物がどのように健康と関係を持つかが解明されてきました。もちろん肌にも関係しています。

今回は腸と肌の関係についてお話させていただきます。

腸には100兆以上の細菌が生息

腸の主な役割は消化吸収です。口から入った食べ物は食道を通り、胃のなかに入って強い酸と酵素で消化されます。その後、表面が細かい「じゅう毛」と呼ばれる突起物で覆われた小腸を通過します。小腸内で脾臓や肝臓が分泌する酵素と混ざりあい、更に消化され、大腸に到達します。大腸には沢山の微生物が存在しますが、これらの微生物は消化されなかった食物の残りかすを食べて生きています。その細菌の食べ残したもの、食べられなかったものが、細菌、腸粘膜が水とともに便となり排泄されるのです。

人間の腸内には1000種類、100兆個以上の腸内細菌が存在します。菌には健康に良い影響を与える「善玉菌」と健康に悪影響を与える「悪玉菌」、どちらとも言えない「日和見菌」があります。健康な人の腸ではこれらの菌が2:1:7のバランスで維持されています。

ところが加齢とともに善玉菌は減少し、悪玉菌が増加して腸内フローラのバランスが崩れてきます。これは加齢のみならず、ストレスや過食、高脂肪食などのライフスタイル(食生活)の変化、抗菌薬や抗がん剤の使用でも引き起こされます。腸内フローラのバランスの崩れが長期間持続すると、肥満や2型糖尿病(遺伝的な要素に運動不足や食べ過ぎ等が重なって発生する)等の生活習慣病や炎症性腸疾患、がんなどの罹患リスクが高まります。れらの菌が2:1:7のバランスで維持されています。

このように腸内細菌は大腸のみならず身体全体に影響を及ぼしていると考えられます。またマウスではうつや自閉症スペクトラム障害と腸内細菌の関連も言われています。痩せ型と肥満型の腸内細菌を双子の無菌マウスに摂取したところ、それぞれ痩せ型と肥満型のマウスになったという報告もあります。

腸内細菌と肌の関係

腸内細菌は肌にも影響を与えます。腸内細菌のバランスが乱れて腸粘膜が弱くなると、食べものが消化されず体内に入ってしまうため食物アレルギーを引き起こし、じんましん等につながるのではないかとも言われています。また腸管には身体に入ってきた異物に反応し有害なものをやっつける免疫システムの役割があります。腸内環境が悪いと容易に体に入り込みやすくなり免疫反応が暴走して、アトピー性皮膚炎などをひきおこすのではないかと考えられています。

便秘の方はニキビを合併していることが多く、これは問診でも必ず確認する項目です。便秘症の方に漢方等を使いお通じを改善すると、ニキビも改善することは多くの臨床で証明されています。さらには腸内環境の乱れで肌等の炎症を促進するサイトカインと言われる伝達物質が増えると、ニキビの原因の一つになると言われます。

腸内の善玉菌の代表的なものに皆様もご存知のビフィズス菌があります。ビフィズス菌は美肌に欠かせないビタミンB群を生産し、さらには美容に効果的なカルシウムやマグネシウム等のミネラルの吸収を助けます。美しい肌を例えてよく「赤ちゃんのような肌」と言いますが、実に乳児の腸内はビフィズス菌が9割以上を占めています。

良い腸内環境を保つには食事が大切

腸内環境を良い状態にするには何より食事に気をつけることが大切です。

炭水化物はおおまかにヒトが消化する1)炭水化物、2)腸内細菌が消化する炭水化物、3)どちらでも消化されずに体外にでる炭水化物の3つに分類されます。1番のヒトが消化する炭水化物は大腸に到達する前に消化されます。例を挙げますと白米、白パン、ジャガイモ、パスタなどです。腸内細菌のえさとなる2番の炭水化物は、豆類、全粒粉、多くの果物や野菜に含まれます。これらは小腸で消化されず大腸の細菌によって発酵されます。炭水化物の摂りすぎが健康に悪いと言われるのは1番の炭水化物のせいです。これらは食後速やかに血糖値を上昇させ2型糖尿病を引き起こすことがあるからです。

最近、炭水化物を徹底してとらない糖質制限ダイエットが流行っています。これば厳格にやると豆や芋類、根菜や一部の葉物野菜も避けるため、腸内細菌のえさとなる炭水化物も減ることになりますので注意が必要です。

善玉菌を増やし悪玉菌を減らす食生活

腸内フローラのバランスを改善し、カラダによい作用をもたらす生きた微生物のことをプロバイオティクスと言います。その代表的なものに乳酸菌やビフィズス菌があります。

乳酸菌やビフィズス菌を多く含むものは、チーズ、ヨーグルト、味噌、納豆、キムチ等の発酵食品です。韓国の女性は肌がきれいと言われていますが、それはキムチのせいかもしれませんね。乳酸菌は時間をかけて腸内で増殖するため続けて摂ることが肝心です。朝ご飯がパン食の方はチーズやヨーグルトを、そして和食の方は納豆やみそ汁をなるべく欠かさずに食べる習慣をつけましょう。特に納豆菌には悪玉菌を減らし善玉菌の増殖を促す働きもあるとされていますので、腸内環境を整えるにはお勧めの食品です。他にも善玉菌のエサとなる食物繊維やオリゴ糖を摂ることも心がけてください。食物繊維は穀物、芋類、海藻等に多く含まれます。オリゴ糖は大豆やバナナ、ごぼう等に含まれています。

反対に肉類やその加工品のハムやソーセージ等の過剰摂取は腸内環境を悪くさせるため適度に抑えましょう。肉やバター等に含まれる飽和脂肪酸を好む腸内細菌は、腸内に炎症を引き起こす可能性があり、食べ過ぎには注意した方が良いでしょう。

ただし、人それぞれに腸内環境が異なるため、どのタイプのプロバイオティクスをどれだけ摂取すれば良いかは人によって異なります。肌の調子が悪くて、乳酸菌やビフィズス菌を含む食品を摂り続けても改善しない方は、一度、専門医に相談されても良いと思います。

腸内環境を整える有効成分は食事から摂るのが望ましいですが、難しい方はサプリメントも多種販売されています。サプリメントには相性があるので注意してください。不快な腹部膨満やガスが多くなる等がなく、便通が良くなる兆候があれば相性の良い証拠です。

美肌になる腸内環境は一朝一夕で変わるものではありません。便のにおいや性状をみながら1ヶ月程度続けて効果を見ていきましょう。ちなみに健やかな便のは黄土色でバナナやフランクフルトソーセージのような形の長くてスルリと出る便です。

ストレスも腸内環境に影響する

食事はもちろんですが、ストレスや睡眠不足でも腸内環境は悪くなります。暴飲暴食はさけ、適度な運動をして、健康的なライフスタイルを心がけることも大切です。

腸は自律神経とも大きな係わりを持っていますので、ストレスが便秘や下痢につながる場合もあります。忙しい現代人にストレス無しの生活は無理ですが、イライラする時には深呼吸がお勧めです。ゆっくりと息を吸い込み、その倍の時間をかけて細く長く息を吐くと良いと言われています。また笑う門には福が…と言いますが、一説によりますと口角を挙げて笑うことで副交感神経が刺激されリラックスできるとも言われています。

以上、腸内環境を整えるヒントをお話ししました。美しい腸は美しい肌につながります。毎日の生活で「これなら出来そう」と思うことがあれば、是非、今日から取り組んでいただきたいです。それを続けることが肌のアンチエイジングにもなるはずです。

 


~皮膚科医師 白木 美保~

西奈良メディカルクリニック メディカルフィットネス登美ヶ丘勤務
http://www.nishinara-med.com/staff.html

皮膚の事は何でもお聞きください。 皮膚がより健康な状態で年齢を重ねていけるようにお手伝い致します。
美容に関するご相談も、お気軽にどうぞ。
同じ子育て中の身ですので、お子様の皮膚トラブルやスキンケアなど細かな事でもご相談して下さい。

■経歴
関西医科大学卒
関西医科大学皮膚科入局
関西医科大学滝井病院 皮膚科
関西医科大学枚方病院 皮膚科
H26~現職(医療法人悠明会)

■担当
・皮膚科の診療
・日本皮膚科学会皮膚科専門医
・日本美容皮膚科学会
・日本小児皮膚科学会

 

2019.01.27 column