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美容鍼灸 中野真由美先生のコラムNo5  冬の健やかな過ごし方

 

近年の気候変動で、比較的温暖だった日本の冬も寒さが厳しくなっています。寒さは循環器に影響を及ぼします。理由は体温を上げようとするために、心臓や血管に負担がかかるからです。毛細血管を収縮させるので血圧も上がりやすくなります。そのため、心臓病、脳卒中等の発生がこの時期に集中します。また寒さは、腎・膀胱系に影響を与えます。冷えによりお小水が近くなったり、浮腫み、膀胱炎、腎炎などの腎疾患が悪化しやすくなります。

冬に激しく動いて汗をかくことは良くありません。「陽気」を外に発散し続けると、寒さに熱を奪われて、生命力をどんどん消耗していきます。身体はこれを避けるために「気」の流れをできるだけ内側に引き留めようとします。こうして「寒を防ぐこと」や「消耗した生命力を回復して各機能を修復すること」で、翌春からの活動力の基礎を作っていきます。秋に収斂を始めた身体は、冬になるとさらに圧縮され、身体の窓を閉じて余計な代謝や体力の消費を抑える体制に入っていくのです。

今回は寒さ厳しい冬を耐え抜き、健やかに春を迎えるヒントを、日々の生活、食事等を交えてお話します。


冬を健やかに過ごすキーワード「補腎防寒

冬三月 此謂閉藏 水冰地土斥 無擾乎陽

早臥晩起 必待日光 使志若伏若匿

若有私意 若已有得 去寒就温 無泄皮膚

使氣亟奪 此冬氣之應 養藏之道也

逆之則傷腎 春爲痿厥 奉生者少

上記は、毎回おなじみになりました黄帝内径に記されています冬の過ごし方です。訳すれば…

  • 冬の三ヶ月を閉藏(へいぞう)と言います。
  • 水は凍り地が裂け、天の陽気が遠ざかります。
  • 早く寝て遅めに起き、日が昇るのを待ちましょう。
  • 欲望は控えめに…既に叶えたかのような満足感を持つようにして

落ち着いた心で過ごすことです。

  • あまり活発にならず、冷えることから身を守り身体を温めましょう。(過剰な運動で汗をかくこと等は、もっての他です!)
  • 陽の気を体内に留めるようにしましょう。
  • これが精神的かつ肉体的な冬の養生です。
  • これに逆らう生活をしていると腎の気を損傷して、春になっても活力が戻らず体調を崩すことになります。

冬は「閉蔵」とありますが、これは戸を閉ざして陽気を蓄えることです。色々な思いや考えがあっても行動に移すのは控えて、心身に保ちつつ、春が来るまで熟成させましょう。

人体に陽気がなければ、新陳代謝の活力を失うことになります。そのため、天の陽気が衰える立冬後の日常生活は「臓を養う」ことを大事にして過ごしましょう。

冬は五行では「水」にあたり、水と大きく係わりを持つのが「腎」です。腎を消耗しますと、春には体力、気力ともに衰えて健やかに過ごせなくなります。良い例が自然界の植物にあります。草木類の多くは地上部の茎、葉を枯らして、根を肥大させています。樹木も、枝、葉の成長を止め、葉を落として、翌年のための枝、葉や花になる芽を準備しています。つまり冬は気を保養する季節なのです。


腎を支える働きを持つ「丹田」

冬の臓の「腎」は、東洋医学では人が生まれつき持っているエネルギー「先天の気」を保管する役割があります。腎は排尿だけでなく成長、発達、生殖、水分代謝に関係する機能系統であり、現代医学で言えば、腎臓、副腎、生殖器等の内分泌系を含む概念で、アンチエイジングとも密接に関係しています。不妊や生殖器のトラブルも腎に関わります。毛髪が白くなったり、精力が減退するのは腎機能の低下によるものです。冬には腎を養うためにも過度の房事(性交渉の意味)は禁物とされています。

腎が貯蔵する「先天の気」と、呼吸や食物から作られる「後天の気」を結びつけて、精神力である「真気」を作りだす「丹田」の働きは生きることにおいてとても重要です。丹田の位置はおへその5㎝程下の辺り、腎臓の裏側になります。東洋医学では丹田は腎を支える働きを持ち、心と身体の結び目なので、ここが安定すれば精神力を増すことが出来るとされています。丹田の働きを活発にするには、目を閉じて、肩の力を抜きながらゆっくりと腹式呼吸をすることです。そして重要な事柄の決定は、丹田(腹)から発せられる言葉に心を傾けて任せると良いと言われています。疲れた時や迷いがある時は、是非、丹田を意識して腹式呼吸をしてみてください。


冬の早起きは要注意

冬は腎を温め陽の気を補う過ごし方が理想です。日常生活では「陽を妨げることなく、早寝して遅めに起き、日光を待たなければならない」ということです。早起きが良いのは春からで、冬の朝は早く起きることなく暖かく過ごすようにしてください。早寝して遅めに起き、日が出たら働くというように、十分な睡眠を確保しましょう。

また、陽気がかき乱されるために、人体の陰陽転換の生理的機能を破壊してはいけません。前述の黄帝内径にもありましたが「冬は天地の気が閉じ、血気は伏せて隠れるので、人は汗が出るように働いて、陽気を発散してはならない」のです。

服装は少な過ぎず、薄過ぎず…が肝心です。薄着で室内の温度が低すぎると風邪をひき、陽気も消耗します。一方、厚着で、室内の温度が高ければ皮下と筋肉がたるんで、陽気は潜むことがなく、風邪が侵入しやすくなります。服装も室温も過ぎたるは及ばざるがごとし…です。


「補腎防寒」に良い冬の食生活 

次に食事の面から冬の過ごし方を述べます。冬は寒さのために身体機能が冬眠状態に偏ります。エネルギー代謝が低下し、冷えが加わると血流が悪くなり、正常な体温調節が難しくなります。免疫細胞は37℃前後で活性化するので冷えると免疫力も低下し、風邪をひきやすくなります。そこで、身体を温め体力をつけることのできる強壮作用の食品や、血液の巡りを良くし造血作用のある食べ物の摂取が必要になります。

また、人には老若男女、体には虚、実、寒、熱の違いがあるため、若者は養うことを重んじ、中年は補給の加減を重んじ、老年は保護を重んじ、高齢者は命を延ばすことを重点的に考えましょう。生ものや冷たいものを少なめにするとか、熱過ぎない温かいもの、滋養(栄養)のあるものを意識的に摂るようにしてください。カロリーの高い食べ物をいただくことも大切です。

ビタミンの不足を避けるため、新鮮な野菜、果物等も多く食べましょう。ビタミンCは熱を加えると損傷しやすいので、みかん等、生で身体を冷やさない食材を摂ると良いでしょう。日本は南北に長い地形で、北と南で気温や風土の差が大きく出ます。よって、通り一辺倒な対策ではなく、地産地消を心がけ土地柄を考慮し、地方に合った健康食も取り入れてください。


冬のお勧めは「根菜」

秋から冬にかけて植物の多くは根に養分を集中させています。ですから冬の養生食としては根菜類、特に山芋(大和芋、自然薯、長芋)がお勧めです。主成分はでんぷんでネバネバ成分のムチンが含まれており、冬に向けて抵抗力をつける強精作用があります。身体を潤す食材ですので積極的に摂ってください。山芋類は生のまま食べられるので、とろろや短冊にしてお召し上がりいただけます。

この時期は気温も湿度も低下してくるので、東洋医学では肺が乾燥し、寒冷刺激を受け、呼吸器系等が病みやすいとされています。そこで肺を乾燥から守るものもリストアップしてみました。秋のコラムと重なっている食品もありますが、寒い季節に良いものですので意識して召し上がってください。

 

大根: アミラーゼをはじめとした消化分解酵素を含み、ビタミンC、カルシウムが豊富。有効成分のスルフォラファンが二日酔いの原因のアセトアルデヒトを分解してくれます。わさびにも含まれる生の大根おろしの辛味成分・アリルイソチアネートは抗菌作用があり、唾液の分泌を促し消化を良くしてくれる働きがあります。大根の尻尾(下)のより辛い部分に多く含まれます。ただし時間が経つと辛味成分やビタミンCは壊れてしまいますので、食べる直前におろしましょう。大根おろしは皮ごとおろして汁も一緒に摂ってください。咳や痰を鎮める作用もあります。

※大根は半分で売っている場合は葉に近い青っぽい部分を買われることをお勧めします。甘味があり、おろす以外にサラダとしても召し上がれます。


レンコン:食物繊維やビタミンCが豊富。粘りの成分ムチンが粘膜に潤いを与え、喉を潤し乾燥から守ります。ムチンには胃もたれや消化不良の改善も期待でき、鼻血を止めるのにも役立ちます。血の巡りの悪い人は加熱したレンコンを食べると良いでしょう。


小松菜:「冬菜」「雪菜」と言われるように、冬に旬を迎える菜野菜です。カロテン、ビタミンC、鉄分、カルシウムを多く含みます。血の巡りを良くし、体内の余分な熱を収めて、心を安定させます。


ネギ(白ねぎ): 独特の香りは硫化アリル(アリシン)によるものです。抗酸化、抗菌作用があります。風邪をひいたら白ネギをたっぷり入れた鍋料理がお勧めです。発汗、解熱、冷え性改善、風邪予防にも効果的で、体を温める食材です。


百合根:漢方薬としても重要な食材で、鼻づまりや頭痛に効く辛夷清肺湯(シンイセイハイトウ)に含まれています。現在でも鼻炎、副鼻腔炎に頻用されています。百合根には心に働く作用もあり、気分を鎮静し、不安、不眠、動悸、焦燥感等の症状を抑えます。


牡蠣:海のミルクとも呼ばれ、亜鉛も多く栄養満点です。精力をつけ、不眠を治し、解毒や神経強化にも効果的です。亜鉛含有量が多いので、味覚障害改善に用いられることもあります。食生活が偏りがちでストレスが多く亜鉛不足になりがちな現代人には必要な食材です。


柚子:ビタミンCが豊富で、クエン酸も含まれており、カルシウムの吸収を助けます。精神の安定にも効果的です。芳しい香りにも効用があります。柚子湯はリラックス効果があり、風邪予防に良いとされています。冬至の柚子湯は日本の風習で厄払いのための禊ですが、冬の健康法になりますので、是非お試し下さい。


黒豆:精をつけ元気にしてくれます。正月料理には欠かせないものですが利水作用、造血作用もある健康食です。イソフラボンも多く女性に好まれる食材です。

正月料理の黒豆の話題が出ましたので、ここでもう一つ、お正月の飲み物に使う食材もお話しましょう。


屠蘇(とそ):正月には、お酒に屠蘇散をつけて、その酒を年少者から順番に飲むしきたりがありますが、屠蘇散は漢方処方になっていて「邪気を屠(ほふ)り、心身を蘇らせる」効果を含んでいます。オケラの根(白朮:びゃくじゅつ)・山椒の実 ・防風(ぼうふう)・桔梗(ききょう)・桂皮(けいひ)・ミカンの皮などが含まれ、初期の風邪や風邪予防、胃腸の働きを助け、体を温める効能があります。

※屠蘇散のティーバッグの残りがあれば、酒ではなく、お湯でほんの少し煎じてください。飲むだけで初期の風邪なら治ります。

冬の体調を整えるツボ

寒くなると重い風邪をひきやすくなります。風邪のウィルスはまず皮膚の表面から入って粘膜を冒します。この段階でウィルスに勝つためには、免疫力を高めておくことが大切です。冬が訪れる前に肺を丈夫にすれば、皮膚粘膜は抵抗力をつけられます。また胃腸が元気なら粘膜や肌肉(柔らかい筋肉の意味)そのものが元気になります。菌は粘膜から入るので、うがいや手洗いは欠かせません。

冷えは万病の元とも言われますが、体を温めるツボで、風邪をはじめとする冬の疾患を予防しましょう。

命門(めいもん): 背中側のおへその真後ろにあるツボです。ココを温めると冷えが改善します。厚着をして熱を逃がさないようにしましょう。

風門(ふうもん):肩甲骨の真ん中上にあるツボで、風邪をひきにくくします。東洋医学では風邪の邪気はここから入るとされています。

湧泉(ゆうせん):足裏の土踏まず真ん中のやや上にあります。疲労回復に効きます。

命門、風門、湧泉のツボを使い捨てカイロなどで温めるのも効果的です。また、ゆったり首まで入浴して、これらのツボをマッサージしても良いでしょう。 もしも出先で生理痛が辛い場合、お湯が出る蛇口があれば、手首を重点的に温めてください。手首に腹痛に効果的なツボがあります。指先まで温めなくてもいいですが、一緒に温めておけば体もポカポカするので良いでしょう。出張や旅行等でも出来るので覚えておかれると便利です。

関元(かんげん):おへそから指4本分程下にあり、気を整えるツボです。生理痛にも効くので、女性には知っておいてもらいたいツボです。

中極(ちゅうきょく): 関元の少し下にあります。排尿の回数を正常にしますが、不妊症治療にも使われ、妊活のツボとも呼ばれています。

曲骨(きょくこつ):中極の少し下、恥骨のすぐ上にあります。排尿障害に効き、こちらも妊活に有効です。

上記はおへそから恥骨の真ん中までに縦にならぶ三つのツボです。どれも正中線上ですが、その時々になんとなく指が止まる場所を温めるようにしてください。

腎兪(じんゆ): 背面の腰に手を当てた時に親指が触れている場所にあるツボで、背骨を挟んで2ヶ所あります。こちらも冷え性、生理痛、更年期障害、子宮筋腫、不妊症、疲れ、だるさに効き、白髪にも効果的です。

 

以上、冬の寒さから身を守る方法を述べさせていただきました。

日照時間が短く寒い冬には、恐れの感情が強く現れます。夜に寝付けない人や、過去のトラウマや嫌な思い出にうなされる人も多いです。皆様も心当たりはないでしょうか?恐れの感情は腎を消耗し傷付けますので、黄帝内径にありましたように「達成した、全うしている」と思うように努め、心穏やかに過ごしてください。恐れを自然への畏敬の念に切り替え、温かいお布団で眠れる事、蛇口からお湯が出るという普段では当たり前の日常に感謝の気持ちを持ち、「ありがとう」と心で唱えながら床につかれると精神的にリラックスします。私の住む地域ではこの夏、台風や地震で停電、断水があり、当たり前の生活がどんなに有難い事かと思い至りました。

イライラとして、何か満たされない、報われない等、自分の存在価値を脅かす不安、恐れの感情が湧いたら、今得ているもの、協力者や、優しく愛情を向けてくれる人に意識を向けて、満ち足りた気分になるよう心がけるのも腎を損傷しない(不安にかられない)過ごし方、考え方の一つと思います。

冬の健康は体を温かく保つことにつきます。冬に熱(陽気)を守る養生をしないと春になって四肢、腰部の疾患を病みやすいとされており、春の半ば過ぎた頃から、身体、精神ともに変調をきたし“五月病”になりやすいでしょう。夏や秋の過ごし方にも書きましたが、 前の季節の生活習慣の乱れが四季を経て、別の時期に病として現れてきます。病んだ時期に対症的に治療するのでなく、普段から気をつけて養生をすれば、未然に防ぎ健康に過ごすことができます。日本人の国民病とも言われる花粉症の原因は冬の不養生です。今のうちに冬野菜をたくさん食べ、うなぎや豚肉、すっぽん、高麗人参等、精力や免疫力がアップする食材も意識して摂ってみてください。花粉症の方は来春には症状が緩和するはずです。

今回で東洋医学の見地からの四季の養生についてのお話はお終いになります。皆様方の心に少しでも響くものがあり、実行に移していただければ嬉しいです。

 


「美容鍼まゆみん」中野真由美 https://www.mayuminsalon.com/

神戸松蔭女子学院大学卒業後、スパを運営する会社に就職.

23歳でマッサージ学院を立ち上げ 、森之宮医療学園鍼灸科に入学.

鍼灸師国家試験を取得した後、病院やスパ施設で勤務.

世界中のスパ施設を視察し、ヘルス&ビューティーの造詣を深め、

独自の鍼灸を開発.プライベートな美と癒しサロンには モデル等の著名人も多く来館.