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女性の薄毛

近年、中高年の女性の薄毛が増えつつあります。

薄毛と言えば以前は男性の悩みとされていましたが、今や女性にとっても悩みの一つになっています。その証拠にテレビや新聞、雑誌等に女性の薄毛関連のケア商品、さらには鬘や植毛の広告が非常に多く見られます。なぜこれほどに女性の薄毛が増えたのでしょうか?理由には諸説あります。毛染めやパーマの弊害、シャンプー等のヘアケア品に含まれている一部の成分の影響他、食生活や生活習慣も言われています。

ある女性誌の記事で、若く見られる要素に、髪にボリュームがあることが挙げられていました。確かに薄毛になると老けて見られます。若く見られたいことは女性の永遠の願いでもありますので、薄毛のケア方法を知りたい方は多いことでしょう。ただ現状では、女性の薄毛の原因は、医学的にはっきりと解明されていません。ですが徐々に明らかになっている事もあります。今回は毛髪のメカニズムを知り、何が薄毛の原因に繋がるかを、分かる範囲でお話させていただきます。

 

毛周期について

毛周期とは、髪が生える→成長する→抜け落ちる…と言う毛髪の寿命を指します。女性では5~6年とされています。

髪は常に成長しているのではなく、

  • 成長期:髪が日々太く成長する時期 (約5年)
  • 進行期:髪の成長が終わり抜け落ちる時期 (数週間)
  • 休止期:脱毛した後に次の髪を生みだす準備期 (数ヶ月)

のサイクルを繰り返しており、これを毛周期と言います。

人間の髪は平均で10万本と言われており、頭全体では、成長期の髪が85~90%、進行期1%、休止期が10~15%とされています。個人差や季節の差はありますが、休止期の髪が1日に50本~100本程度、脱毛していき、そこから次の新しい髪が生えてきます。

シャンプーしたり、梳かしたりすると髪の毛が抜けるのを気にされる方がいるかもしれませんが、1日100本程度の抜け毛は髪の生え変わりのために自然に起こる現象です。しかし、それ以上の抜け毛が続くと、成長期の髪が追いつかず、薄毛を引き起こしてしまいます。

脱毛の原因

女性の脱毛は様々な原因や生活習慣が関係すると考えられます。最初にも書きましたが、男性型脱毛(AGA※Androgenetic Alopeciaの略)と違い、はっきりとした原因が分かっておらず、治療方法も確立されていません。ただ、極端なダイエットやストレス、過度のヘアケア、ヘアスタイル、紫外線等が、原因になると考えられています。

次に現状で考えられる原因について詳しく述べます。

1.老化

最も多い原因と考えられています。年齢を重ねると細胞自体の働きが衰えてくるためです。女性と男性の薄毛(AGA)との違いは、頭頂部や生え際の後退ではなく、全体的に髪の毛が抜けて薄くなることです。

エストロゲンは女性らしさに関係するホルモンで、艶やかで綺麗な髪の育成や頭皮を健康に保つ作用があります。残念ながらエストロゲンは30代をピークに加齢とともに分泌量が低下し、閉経すると著しく減少します。このことは頭皮にも大きな影響を与え、老化が進み、健康で丈夫な髪を育てることが出来なくなります。また成長期の髪が少なくなり、休止期の髪が多くなる結果、髪が細く短くしか成長できず、抜け毛が増えて薄毛になってしまいます。

最近では、女性でもAGAの症状を発症する人が増えていると言われています。加齢により女性ホルモンが減少すると、女性ホルモンより男性ホルモンの働きが優位になり、AGAを引き起こすと考えられています。男性ホルモンがどのように作用するかと言いますと、体内にあるテストステロンという男性ホルモンが、酵素の一種である5αリダクターゼという物質と結びつくことで、ジヒドロテストステロン(DHT)に変化します。DHTは毛根の成長期を停止する働きがあり、髪が十分に成長しないまま早期に進行期に入り、すぐに休止期に移行します。つまりDHTがヘアサイクルの成長の期間を短くするため、成長途中の細い髪の毛が増え、ボリュームがなくなり、脱毛の症状になるわけです。

2.過度のヘアケア

日本人は世界的に見てもとても清潔好きです。大半の方が毎日シャンプーをされていると思います。頭皮を清潔にすることは良いことですが、それも度が過ぎると悪い影響があります。一日に何度も洗髪をしたり、シャンプー他、ヘアケア品のすすぎ残しがあったりすると、頭皮に過度な刺激が加わることになり、薄毛に繋がる可能性があります。

ここで正しいシャンプーの仕方を述べておきます。

①ブラッシングをする

髪についているホコリや汚れを落とし、お湯の通り道を作るためです。

②お湯で髪をすすぐ

シャンプー剤をつける前に、お湯で髪をよくすすぎます。爪をたてると頭皮を傷つけるので、指の腹を使いながら頭皮や髪にしっかりと流していきます。お湯の温度は皮脂を落すためにも体温よりは少し高めの38度~40度位が良いでしょう。お湯で洗うだけでも髪の汚れの80%は落せると言われています。しっかりと流すことで余計なシャンプー剤を使わなくても十分に泡立つようになり、頭皮や髪への負担も軽減されます。

③シャンプー剤をつける

手の平でよくなじませてから頭皮につけていきます。ゴシゴシと強くこすることは避けてください。強く洗うと頭皮を傷つけてしまいます。

②と同様に爪はたてず指の腹を使いながら頭皮をしっかりと洗いましょう。シャンプーは頭皮を洗うことが主な目的です。髪には泡を行き渡らせる程度で十分です。

※濡れた状態で髪を強くこすると、キューティクルが剥がれたり、髪の内部が空洞化する等、悪い影響がありますので、気をつけてください。

④洗い流す

洗い残しは肌荒れやトラブルの原因になりやすいので注意してください。耳の裏や顔の周り、襟足は洗い残しをしやすいので意識してすすぎましょう。洗髪で最も重要なことはすすぎです。

洗髪は基本的に一日一回で構いません。大量に汗をかいて、洗いたい時はシャンプー剤を使わず、お湯で洗うだけで十分です。前述しましたが、水やお湯で洗うだけで8割の汚れは取れると言われています。シャンプー剤の使い過ぎは頭皮が乾燥しやすくなる等、過剰な負担をかけてしまうことになります。

また、毛孔にこびりついた皮脂を取るため、ブラッシングの後に、ホホバオイル等で頭皮をマッサージすることもお勧めです。この後にシャンプーしますと、オイルで浮き上がった皮脂がシャンプー剤により、きれいに洗い流されます。

3.パーマや毛染めの影響

パーマや化学物質の毛染めをされている場合、その薬剤が頭皮に合わない時に炎症やかゆみ、痛みを引き起こしてしまうことがあります。それにも関わらず、繰り返していますと、頭皮に慢性的な炎症が起き、脱毛の原因になります。

毛染め剤に含まれていますパラフェニレンジアミン(PPD)という成分は、接触皮膚炎(かぶれ)の原因になりやすいので、毛染めをした後にかゆみや痛み等が長引き、かぶれた場合は、毛染めをやめるか、別の方法に替えることをお勧めします。昨今は頭皮にやさしい毛染め剤も出ていますし、ナチュラルな白髪染めとしてはヘナもあります。ただ、ヘナで染める場合は微妙な色合いを出すのは難しく、また植物アレルギーがある人はヘナを用いることはできません。

パーマや毛染めはお洒落の大切なアイテムとは思いますが、そのことが脱毛に繋がっては元も子もありませんので、注意していただきたいです。

4.ヘアスタイル

同じ分け目のヘアスタイルをしていると、分け目の部分の髪や頭皮に負担がかかり、その負荷で髪の毛が薄くなることがあります。また、分け目には紫外線があたりやすく、頭皮は紫外線ダメージを受けることにもなります。その結果、頭皮に炎症を起こし、育毛環境が悪くなります。さらに紫外線に当たると活性酸素が発生して脱毛の原因になります。紫外線の強い時期は、帽子や日傘で予防をしてください。

また、まとめ髪やアップのヘアのスタイルを長い時間続けていると薄毛の原因になる場合があります。少し引っぱった程度では髪が抜けることはありませんが、ポニーテール等、長期間継続して髪がひっぱられる状態が続くと、頭皮に負荷がかかり薄毛の原因となります。分け目を定期的に変える、同じヘアスタイルを避ける等の工夫をしましょう。

5.過剰な皮脂の分泌

皮脂は皮脂線で作られ、皮膚の表面で皮脂膜を形成し、皮膚の表面を保湿する役割を果たしている重要なものです。しかし、皮脂の過剰分泌によって頭皮に炎症が起こり、脱毛が起きることがあります。乱れた食生活や、長い間、洗髪がきちっと出来ていない場合、またシャンプーのし過ぎ等で、毛孔が皮脂で塞がってしまうと、毛母細胞は大きなダメージを受けます。さらに症状が悪化しますと脂漏性皮膚炎を引き起こすこともあります。

※脂漏性皮膚炎とは、皮膚の常在菌のマラセチア菌が皮膚の表面で異常に増殖すると起きる、フケのような白い粉を伴う湿疹やかゆみの症状です。

6.過度なダイエット

極端なダイエットでお肉を食べない、食事を抜く等しますと、髪の成分であるたんばく質やビタミン、ミネラルが摂取できず、薄毛に繋がることがあります。

7.出産、授乳期

妊娠中は女性ホルモンの関係で多毛になる傾向がありますが、出産後にはホルモンが減り、髪の生えるサイクルが止まってしまうため、赤ちゃんを産んで4~20週頃に沢山の脱毛がおこる場合があります。ただ、出産に伴う抜け毛は産後2~5ヶ月で自然に回復してきます。

さらに授乳をしていると女性ホルモンの分泌が低い時期が続きますので、しばらくは脱毛が続くことも考えられます。授乳の回数が減る産後1年程で治ってくるはずですが、ずっと抜け毛が多いと感じるようであれば、育児のストレス等が影響しているのかもしれません。気になる方は定期健診の際にでも医者に相談してみてください。

8.喫煙

喫煙をするとビタミンが失われ、さらには髪の成分のたんばく質の生成も低下しますので、抜け毛が多くなると言われています。女性の喫煙は美容にも良くないので、抜け毛が少なくても辞めることをお勧めします。

9.甲状腺疾患

女性の抜け毛は甲状腺ホルモンの分泌が不足している場合にも起こります。同ホルモンには新陳代謝を促す役割がありますが、不足すると生え変わりがスムーズにいかず、薄毛になってしまいます。抜け毛の他に全身の倦怠感、むくみ、皮膚の乾燥、月経異常等の症状がありましたら、甲状腺の病気かもしれませんので、医者に相談したほうが良いでしょう。

10.ストレス

全ての体調不良にはストレスが係わっています。ストレスが引き起こす血行不良や、睡眠不足、ホルモンバランスの崩れで、抜け毛を引き起こすこともあります。現代社会で、ストレスの無い生活は無理ですが、ご自分なりのストレス解消法をみつけるようにしてください。

 

発毛に有効なヘアケア品

女性用の発毛剤として、国内で唯一、効能・効果が認められた医薬品が、ミノキシジルを1%配合したリアップリジェンヌ®です。また海外の製品になりますが、ミノキシジル2%配合のロゲイン®があります。その他にも様々な発毛効果を謳う育毛剤が市販されています。はっきりとは断言できませんが、それなりの効果は期待できると思います。また最近は育毛治療用の飲み薬も開発されてきました。美容皮膚科で購入できますので、試してみることも良いでしょう。

 

髪に良い成分

1.アミノ酸

髪の主成分はケラチンというたんばく質です。ケラチンはアミノ酸から出来ています。そのため良質なアミノ酸を含むタンパク質を食事に取り入れると健やかな髪の毛を維持することに繋がります。肉、魚、乳製品等には良質なアミノ酸が含まれています。

2.各種ビタミン、ミネラル

髪は細胞分裂によって成長していきます。細胞分裂が正しく行われるには各種ビタミンやミネラルが必要です。緑黄色野菜にはバランスよく各種ビタミンが含まれています。また亜鉛が不足しますと、脱毛に繋がりやすいので、魚介類や海藻類も程良く摂るようにしてください。

3.イソフラボン

ストレスや加齢によりホルモンバランスが崩れると薄毛の原因になります。大豆に含まれるイソフラボンに代表されるような、ホルモンに似た働きをする栄養素を取ることも大切です。豆腐、納豆、味噌等を日々の食事に上手く取り入れてください。

4.抗酸化物質

活性酸素が過剰に発生すると細胞を酸化させ、老化や体の不調の原因となります。活性酸素は、紫外線やストレス等によって発生します。頭皮の皮脂分泌量は非常に多く、活性酸素により皮脂が酸化すると頭皮の代謝が損なわれ、髪の成長にも悪い影響を与えます。肌も同様ですが、頭皮のためにも活性酸素を抑制する作用のある抗酸化物質は積極的に摂るようにしましょう。お勧めの食品にはアボカドやトマト、ナッツ類があります。

 

 

以上、女性の薄毛について分かる限りの原因と、ケアの方法をお話しましたが、最初に書きましたように薄毛の決定的な治療は残念ながらありません。東洋医学では髪のことを「血余」と言い、読んで字のごとく生命を維持する血液が充実してその成分が髪になると考えられているそうです。つまりは、健康な方は髪もふさふさして美しいと言うことになります。この考えは西洋医学にも通じます。抜け毛が気になる方は、今一度、自分の食事や生活習慣を見直してください。脱毛の原因として考えられる事を挙げましたが、その中で当てはまるものがあれば、なるべく控えていただきたいです。

また女性の脱毛に関する画期的な治療が見つかりましたら、お話したいと思っています。

 

松田七瀬 マエダクリニック勤務 http://maedacl.jp/
経歴 平成17年 大阪市立大学医学部付属病院 初期臨床研究医
平成19年 大阪南医療センター皮膚科
平成20年 大阪府立呼吸器・アレルギー医療センター
平成25年 シロノクリニック 大阪市内皮膚科クリニック等で勤務
所属 日本皮膚科学会認定専門医 日本抗加齢学会専門医
日本皮膚科学会 日本美容皮膚科学会 日本アレルギー学会
日本皮膚アレルギー・接触皮膚炎学会 日本抗加齢医学会

 

2018.10.14 column