日本女性がこだわる美白
■美白の第一歩は紫外線を浴びたお肌のケア
「色の白いのは七難隠す」のことわざもあるほど、日本女性は世界的にみても美白志向が強いです。この傾向は、もともと肌の白い欧米人に比べ、黄色人に見られるように感じます。近年は日本に続き、お隣の韓国や中国、タイ等の女性達にも美白ブームが訪れているようです。
美白の第一歩は紫外線でダメージを受けないことです。その意味で、初夏から初秋にかけての紫外線が強い季節には日常のお手入れが大切と言えましょう。特に夏にバカンスで日焼けをした方は、その後のお手入れを入念に行ってください。
日焼けとはお肌が炎症を起こしている状態です。まずは炎症を鎮静化させるために、肌が赤くなったり、火照ったり、ヒリヒリしたりしている部分をしっかりと冷しましょう。日焼け後のお肌は水分が不足して、非常に乾燥しやすくなっています。充分に化粧水で保湿することが大切です。お肌の状態もデリケートになっていますで、刺激を抑えるためにも、敏感肌用の低刺激性のものを使うほうが良いでしょう。化粧水をつける際は、ゴシゴシこするようにしたり、強くパッティングすることは避け、やさしく丁寧につけてください。化粧水で水分補給をした後は、油分のある乳液やクリームをぬって保湿成分が逃げないように蓋をしましょう。あらかじめ冷蔵庫で化粧水を冷やしておくことや、冷えた化粧水でパックをすることもお勧めです。
ただし真っ赤になっていて・冷やしてもヒリヒリする状態がなかなか引かない・水ぶくれが出来ている・腫れがひどい場合は、火傷と同じ状態ですので、皮膚科を受診して治療をしてもらってください。
紫外線を浴びると表皮の最も深いところにあるメラノサイトでメラニン色素が作られ、黒く沈着してきます。この現象は浴びてから24~72時間経過した頃に起こると言われていますので、なるべく早くにメラニン色素が作られないようにケアすることが大切です。メラニン色素の生成を抑制する代表的な美白成分として、ビタミンC誘導体、トラネキサム酸、ハイドロキノン、プラセンタエキス、コウジ酸、エラグ酸、リノール酸、アルブチンなどがあります。
個人的に一番お勧めなのはビタミンCの誘導体が配合された化粧水や美容液、パックです。ビタミンCには・メラニン生成の抑制・出来てしまったメラニン色素を還元して細胞を活性化する・肌のターンオーバーを整える、等の作用が期待できます。活性酸素を抑え除去する抗酸化作用で、シミだけでなく肌の老化を防ぐ働きや、コラーゲンの生成を助ける作用もあります。
上記の美白成分が配合された化粧水や美容液で保湿をすることで、メラニンの生成の抑制が期待でき、肌が黒くなることを最小限に抑えることができます。ただビタミンC誘導体やハイドロキシン等は、成分によってはやや刺激性のあるものもあります。お肌に合わないと感じたら使用を控えてください。
■美白とシミ・クスミの対策の違い
結論から申しますと、基本的には美白と、シミ、クスミの対策は同じです。
紫外線を浴びたから、すぐにシミができる訳ではありません。同コラムで以前シミについてもお話させていただきましたが、シミの原因はメラニン色素の過剰生産と皮膚のターンオーバーの遅れです。そのベースに日焼けや肌のクスミがあります。クスミの原因にはいくつかあり、
・紫外線を浴び、メラニン色素が定着して黒くなる
・肌のターンオーバーがきちんとされずに古い角質がたまり、肌がゴワゴワして肌のトーンが暗くなる
・乾燥により肌の透明感が失われて肌のトーンが暗くなる
・糖化(タンパク質と糖が結合する)により、クスミで肌が黄色っぽくなる
・血行不良により肌色が悪くなる
上記のことが挙げられます。
紫外線はほぼ、これら全てに影響を与えます。紫外線を浴びると肌が乾燥しやすくなり、肌の潤いを守ろうとして角質が分厚くなります。メラニンの産生が過剰になり、日焼けやクスミとなります。何度もお話しましたが、シミやクスミ、美白の対策には、まずは紫外線の予防とケア、保湿をしっかりと行うことが最重要課題です。
■美容皮膚科お勧めの美白対策
日本人女性の美白志向を反映して、美容皮膚科には様々な美肌対策のアイテムが用意されています。その代表的なものをご紹介します。
1) 美白注射(ビタミン注射)
各クリニックが独自に美白効果のある成分を配合した注射を行っています。それぞれのクリニックで成分の配合は異なると思いますが、ビタミンB2, 6、ビタミンC、トラネキサム酸が主な成分になっていることが多いです。美白成分、抗酸化成分をたっぷりと配合し、肌トラブルの改善や日焼け後の鎮静にも大変効果的です。
美白注射は一回で即、効き目が現れるものではありません。週に1回、または2回を、最低1,2ヶ月続ける必要があります。ただ注射に頼るだけでなく、化粧水や美容液等、日々のケアも必要です。
2)プラセンタ注射
プラセンタ注射は厚生省の認可がおりている医療機関でのみ受けられる注射です。
プラセンタとは人の胎盤を意味します。プラセンタには、各種ビタミン、ミネラル、アミノ酸等の栄養素や、細胞増殖因子、免疫強化物質等が含まれています。これらの成分には細胞を活性化する力があります。薬としても50年以上の歴史があり、様々な症状・疾患に効果があり、医学的・科学的な効果も確立されています。
お肌に対しては、美白・美肌・抗酸化作用・アンチエイジング等の効果が期待できます。美白注射同様に、注射してすぐに効くものではありませんが、大体3ヶ月以上継続すると、肌に成果が現れてくるはずです。
※プラセンタは注射だけでなく、TVのCM等で紹介されているように美容液、サプリメントもあります。ただし、これらは人のプラセンタではなく豚等の動物のものを使用している場合が多いです。動物のプラセンタが人のものと同じ効果があるかは、はっきりとは分かりません。品質にもばらつきがありますので、プラセンタの化粧品やサプリメントを服用される場合は、原材料がきっちりと見極められるものを服用するようにしてください。
3)高濃度ビタミンC点滴
人はビタミンCを体内で合成することはできないため、外から摂取する必要があります。
食べ物や内服薬、サプリメント等、一般的な美白点滴では摂取することのできない、高濃度のビタミンCを点滴することで、美肌・美白・アンチエイジング効果や免疫力を高め、健康な体と肌を作ることができます。
高濃度ビタミンC点滴は、内服に比べ20~50倍もの非常に濃度の高いビタミンCを直接に血液に点滴することで、余計な代謝を受けず、血中濃度を一気に挙げることができ、全身に行き渡たらせることができます。
高濃度ビタミンCの点滴には次の効果が期待できます。
・メラニンの合成の抑制
メラニンの生成を抑制し、シミやクスミを薄くして、お肌のトーンを明るくします。
・コラーゲンの合成
ビタミンCには肌のハリや弾力となるコラーゲン、エラスチンの生成促進作用があり、シワ・タルミを改善します。
・肌の保湿促進
ビタミンCはお肌の水分を保つセラミドの生成もするため、お肌に潤いを与え、乾燥肌を予防します。
・皮脂の過剰分泌の抑制
過剰な皮脂の分泌を抑え、オイリースキンの改善や、ニキビを出来にくくします。
消炎効果もあるため、ニキビ跡の赤みを抑えることができ、その後の色素沈着の改善も期待されます。
・抗酸化作用
ビタミンCは体が錆びる原因となる活性酸素を抑える働きがあります。強力な抗酸化作用で老化の原因となる活性酸素を除去して体の酸化を防ぎます。
・免疫力回復
高濃度のビタミンを点滴することで、内服に比べて血中濃度を効率よく高めるため、疲労倦怠感の回復に即効性があります。
活性酸素は日々のストレスによっても作られますが、同点滴をすることで健康的なホルモンの働きを助け、ストレスに対応できる体へとつながります。
・抗アレルギー作用
アトピーやアレルギーになると体内で活性酸素が大量に作られます。ビタミンCは免疫細胞に働きかけ活性酸素から体の細胞を守るため、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎等の症状緩和に期待ができます。
4) 白玉注射(点滴)
一般的には白玉注射と言われていますが、実は点滴です。美容効果の非常に高い「グルタチオン」という成分を高配合したもので、現在、非常に注目されています。ハリウッドスターのビヨンセが継続して受けたところ、肌が白くなったので、大きな話題になりました。
グルタチオンは動物性の細胞に多く含まれていて、代謝酵素の働きに大きなサポートをしている抗酸化物質の一つです。美白やアンチエイジングに効果があるもので、私達の体内にも多く含まれています。ただ、20代をピークに減少していきますので、それ以降は自分で補っていく以外に増やす方法がありません。
強い紫外線やストレス、喫煙等により過剰に発生した活性酸素は皮膚内の中性脂肪を酸化させ、過酸化脂質となります。この過酸化脂質にたまったメラニンが蓄積してシミやクスミの原因になるのです。過酸化脂質には細胞を壊す働きもあります。酸化したものは「錆びる」状態になり、細胞が錆びついて老化が始まるのです。
グルタチオンは抗酸化作用によって過酸化脂質を還元させ、排出する働きがあり、美白やアンチエイジングに非常に効果が高い成分です。ただビタミンC同様に水溶性が高いため、内服液として補っても胃腸からはあまり吸収されません。そこで、全身に行き渡せるためには、点滴や注射での摂取がベストと言われています。
ビヨンセの例を記しましたが、白玉注射も即成果が現れるものではありません。続けることで成果が現れます。
■美白化粧品やサプリメントの効果
美白化粧品には美白成分が配合された化粧水があります。これらは肌を潤しながらシミ、ソバカスを防ぐ効果があります。美白化粧水をつけると、その成分が肌に浸透して、シミ・クスミ・日焼け等、肌を黒くする大きな原因の「メラニン」の生成を抑えることができ、シミ・ソバカスのケアにつながります。また化粧水で保湿されることで、肌が潤い、肌に透明感が生まれ、美白効果が得られます。
肌が乾燥していると水分を肌内部に閉じ込めようとするために、ターンオーバーが遅れる傾向になりますが、保湿をすることで、肌の潤いを保ち、ターンオーバーを正常化して、新しい肌への生まれ変わりをスムースに行います。このことはクスミの予防になります。
サプリメントに関してはプラセンタ注射の項目でも少し触れましたが、内容成分の品質や量により効き目にバラツキがあることも考えられます。品質の見極めは難しいですが、ずっと続けていても効果が無い場合は、美容皮膚科の先生方の意見を聴く等、されてもよいかと考えます。
美白化粧品もサプリメントも元来の肌の色より白くすることや、シミやイボを取ることはできません。あくまでもお肌を健康な状態に保ち、気になる症状をできるだけ予防するためのものです。出来てしまったシミやイボを取りたい場合は治療が必要ですので、皮膚科を受診してください。
■美白に良い食物
美白に良い食物は基本的にシミに良いものと同じです。以前のシミのコラムにも記しましたが簡単におさらいしましょう。
肌のターンオーバーを整え、抗酸化力の強いビタミンC、ビタミンB1 、ビタミンE、アスタキサンチン、ポリフェノール、βカロテン、リコピン等の有効成分が含まれている食物がお勧めです。
特にビタミンCは美白だけでなく美肌全般に効きますので、女性にとって本当に大切なビタミンです。Cを多く含む果物、野菜は皆様もご存知と思いますが、緑茶にも多く含まれます。これはテレビの受け売りですが、緑茶の産地の女性は肌がきれいな傾向にあるそうです。ですから日常の飲み物に緑茶を意識することも一考です。
ビタミン類以外に強い抗酸化力のある注目成分は、アスタキサンチンとリコピンです。アスタキサンチンの代表はサーモンです。他にもエビやカニの甲殻類に含まれています。一方のリコピンの代表はトマトです。他にも赤い色の果物や野菜に含まれています。
「白玉注射」の成分のグルタチオンは動物性の細胞に含まれると書きましたが、他にもホウレン草やカボチャ、ブロッコリー等の緑黄色野菜、魚介類にも含まれます。比較的多くの食品に含まれているため、バランスの良い食事を心掛ければ良いでしょう。
最後に食べ物ではありませんが、喫煙は肌には悪影響を及ぼします。喫煙をすると血管が収縮しますので、肌に酸素が充分に行き渡らない状態になり、クスミにつながります。美白のためにも喫煙は控えることをお勧めします。
松田七瀬 マエダクリニック勤務 http://maedacl.jp/
経歴 平成17年 大阪市立大学医学部付属病院 初期臨床研究医
平成19年 大阪南医療センター皮膚科
平成20年 大阪府立呼吸器・アレルギー医療センター
平成25年 シロノクリニック 大阪市内皮膚科クリニック等で勤務
所属 日本皮膚科学会認定専門医 日本抗加齢学会専門医
日本皮膚科学会 日本美容皮膚科学会 日本アレルギー学会
日本皮膚アレルギー・接触皮膚炎学会 日本抗加齢医学会